金融機関における報酬はどうやって決めるべきか

Compensation in finance : Payback (The Economist)
金融危機がこれだけ拡大したこと背景にはいくつか要因があるが、その一つが従業員の報酬体系にあったことは間違いない。高いリスクを取って儲かった場合には多くの報酬がもらえるが、損を出した場合でもボーナスゼロ、最悪でも首になる程度なのだから、損益曲線が非対称的になっている。これではリスクをどんどん取ってしまうのが従業員にとっては経済合理性を持つことになるのは当然だ。UBSが新しく導入する報酬体系は、このような損益曲線の非対称性を是正することを目的にしている。ある年にいくら儲けてもそれに対するボーナスはその年にすべて支払われない。一定額に抑えられる。残りは翌年度以降に繰り延べられ、将来、損失が出た場合にはマイナスのボーナスが発生して、前年度以前の積み立て分から控除されるという仕組みだ。ただこの方法においても儲けを評価するリスクを算出することは難しい。
公的資金投入を受けた銀行、そうではない銀行を含めて、経営トップは今回の騒動を受けてボーナス辞退を打ち出している。しかし難しいのが経営トップ以下のミドルクラス社員の報酬をどうすべきかという点だ。いくら金融業界の景気が悪いといっても、優秀な人材を欲しがっている会社は多く、報酬をけちると他社に逃げられてしまう。証券業界の今年のボーナスは売上の半分以上になると見られる。こんなに景気が悪くてもすべての部門で損失を出しているわけではなく、収益を上げている部門も多い。会社全体が赤字だからという理由で儲かっている部署の社員に対してもボーナスを削減することはやる気の低下にもつながる危険な行為だ。