フォーサイト12月号から

今日になってようやく開封したのだが、今月号にはいくつか興味深い記事がある。まずヒットラーが執筆した「我が闘争」の出版に関する記事だ。ドイツ国内でも誤解が多いらしいのだが、「我が闘争」がドイツ国内で出版されないのは法律で禁止されているからではないという。著作権保有しているバイエルン州が断固として出版を認めていないのが真の原因らしい。しかし7年後には著作権の保護期間が切れてしまうので自由に出版が可能になる。日本を含む国外ではすでに勝手に出版する国もある。ネットでも本文が自由に公開されているのが現状である。著作権切れを前に、権威ある研究所が考証版を出版しようとしたらしいが、バイエルン州は反対の姿勢を変えていない。このままでは内容の真偽に関する専門的な意見もなく、原文そのものの「我が闘争」が出版されてネオナチを勢いづかせることになると指摘している。こんなややこし状況になっているとは初めて知った。

あと、「中絶と避妊の政治学」(ASIN:4250208184)という本の書評も非常に興味深い。日本が戦後において高成長を実現できたのは、日本人が働き者だったということよりも、生産人口が扶養人口(年寄りや子ども)を大幅に上回っていたことが原因という。またベビーブームが長期間続かずに数年で終了したことも成長にはプラスになった。意図的に子どもを減らすために、政府は避妊ではなく中絶を推し進め、この選択自体も世界的にはかなり珍しいことだったのだが、中絶が医療関係者にとって一種の利権と化したために、政府は避妊を進めることを躊躇するようになったという(ピルの普及に対する抵抗など)。読んでみたくなった。