グッドバンクとバッドバンク

Economics focus : The spectre of nationalisation (The Economist)
優先株などを通じて銀行の資本増強を行っても、貸し出しが増加するかと言えば必ずしもそうとも言えない。銀行の経営者は抱えている不良資産の損失がどれだけ発生するか分からないので出来る限り貸し出しを抑えて資本を守ろうとする。そのため不良資産を政府が買い取り、民間の銀行は正常な資産のみに専念させるというスキームが論じられるようになってきた。しかしこれにもいくつかの問題がある。民間銀行から不良資産を買い取るためには、双方が合意できる価格が必要だが、これがなかなか難しい。高い価格で買い取ると納税者の損失が拡大するおそれがあるし、逆に低い値段だと銀行側が売却に合意しない。もし低い価格で売却し不良資産の損失が確定すると一気に自己資本が毀損してしまうので、公的資金の投入とセットにならざるを得ない。つまり銀行の国有化である。国有化してしまえば、銀行の所有者も不良債権を買い取るのも両方とも政府なので利益相反の問題はなくなる。ただ国有化にも多くの問題がある。政府が資本の効率的な配分を行えるのかという疑問が残るためだ。政治的に重要な企業や産業への貸し付けを増やすことにより損失がさらに拡大する恐れもある。