今回の金融危機の遠因

Global economic imbalances : When a flow becomes a flood (The Economist)
これまたThe Economistらしい記事。Briefingなので長文だが読み応えはある。金融危機の犯人としてはウォール街の強欲などがやり玉に挙げられることが多い。確かに原因の一つでもあるし、実際に肉眼で見ることができる人物が対象になるのでマスコミにとっても報じやすいという側面があるだろう。しかしこの記事では(ずっと前より同じ事を同誌では論じていたが)、今回の金融危機の背景にはグローバル・インバランスが存在すると指摘している。つまり中国を始めとする貿易黒字国が、外貨(主にドル)を溜め込み、それが米国市場に殺到してバブルを生み出したというものだ。なぜ貿易黒字国はせっかく稼いだ外貨を自分たちのために使わずに、より裕福な国に投資してしまうのか。理由は通貨危機に備えて外貨準備を出来る限り多く確保しておきたいという点にある。加えて国内の金融市場が未熟であるために、高度で流動性が高い米国市場に投資するしか選択肢がないという面もある。とすると外貨準備を減らすためにはどうすればよいのか。FRBが世界各国の中央銀行と始めた、ドルの融通協定は金融市場の動揺に対して効果があると見られ、外貨準備の必要性を多少は減ずるかもしれない。しかし本来はIMFの機能強化が一番最初に行われるべきだろう。IMFから融資を受けるとあまりにも制約が強すぎ、政策面の柔軟性が損なわれるので非常事態にでもならない限り積極的に利用しようという気にはならない。もっと柔軟な条件で貸し出しを行うようにすれば、非常事態のためにあまりも多くの外貨準備を溜め込む必要もなくなるだろう。