- 作者: ロバート・ルービン,ジェイコブ・ワイズバーグ,古賀林幸,鈴木淑美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2005/07/26
- メディア: 単行本
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韓国やタイは米国の重要な基地が置かれているために、軍事面の影響も考慮しなくてはならなかったという。そのため安全保障に関わるスタッフとルービン率いる経済政策に関わるスタッフには多少認識のずれがあったようだ。
インドネシアに関してはかなり詳細な記述がなされている。改革を進めようとしないスハルト大統領の対応にはかなり手を焼いた様子が分かる。米国やIMFがいくら援助しても、危機を解消するには当事国(インドネシア)の指導者の行動力が欠かせないと強調している。
危機に陥った国のみを非難するのではなく、責任の一部はリスクを鑑みずに投資した先進国の投資家にもあると指摘している。マレーシアのアンワル首相の発言が印象的だ。「不良債務者がいるのは不良融資を行ったものがいるためだ。」要するに貸し手責任ということだ。
この本の冒頭でメキシコ金融危機(1995年)が紹介され、この危機を「21世紀最初の危機」と称していた。このように呼んだのは共和党議員のギングリッチだったらしいが、まさにメキシコの金融危機がそれ以降の通貨危機のモデルケースとなったわけだ。市場経済が進み、世界経済が統合化されるなか、変わりやすい投資家心理をいかにコントロールするのかというのはますます難しい問題になるだろう。このあたりは岩井克人「二十一世紀の資本主義論」を思い出した。
発展途上国への援助・支援に関しても紙面を割いて主張している。人道的な面だけではなく、発展途上国への支援は米国の利益にもなるのだと繰り返し強調している。U2のボノに会った時のエピソードが紹介されていて面白い。部屋の中なのにサングラスをかけており、名字さえない芸名を使っているものの、良識あるまじめな人物だと評価している。
その他興味深い点をいくつか。
・マーケットニュートラルファンドの大半はうまく行かないだろうとの指摘。
・ブッシュ政権の減税策は効果が少ない上に、長期的な悪影響を財政に与えるために、大いなる失策。
・同時多発テロを受けて、環境が大きく変わったにも関わらず、市場参加者の期待にはあまり変化は見られないのは驚きとの指摘。
・そのため株式の評価水準は高く、今後のリターンは低くならざるを得ない。
・またイラクへの攻撃に関しては特に何も述べられていなかった。