心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉

心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉 (NHKブックス)

心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉 (NHKブックス)

「情動」の章からのメモ。
「惚れる」という行為に関する指摘が面白かった。誰かと一緒に子供を育てるという行為は、重要な約束であり、それが取り消せない場合には履行の確実性が高まる。
一方、家庭を一緒に作るパートナーを選ぶ場である、デートとは一種の市場である。しかしその市場でいつまでも自分の条件に当てはまる相手を待ち続けることはできない。つまりそれまでに出会った人の中で最高と思える人と一緒になることになる。ただお互いに、いつでもよりよい相手が登場した時には、相手を捨てて乗り換えるような状況だと、コストも増すことになる。この本では住宅の賃貸市場を例に挙げているが、借り手と貸し手、双方にすぐに契約を解除できる選択肢があると、双方にとってコストが増すと指摘している。貸し手は、いつ借り手が逃げていくかもしれないので、空き家になるリスクがある。そのためこのリスクをカバーできるように高い賃貸料を設定することになる。逆に借り手は、いつでも貸し手が契約を打ち切ることができると、新しい家を探す必要が生じるので安い賃貸料しか払わないだろう。このような場合、双方が一定期間は契約を解除できないという条件で同意することが、双方のコストを引き下げるのに働く。つまりお互いの行動の自由を束縛することがコストを引き下げることになる。
「惚れる」という行為は情動であり、理性でコントロールすることができない。そのため相手が合理的な判断で自分と一緒になろうとしている訳(合理的な判断で一緒になるとした場合は、よりよい相手が現れた場合は逃げることを示唆する)ではないことを示すシグナルになりうる。
引用されている「愛に分別がある人は、愛に無能である」という言葉がうまく要約している。