フロー体験 喜びの現象学

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

読了。アマゾンで購入した本は期待はずれに終わることが多い。たぶん立ち読みできないためだろう。しかしこの本は今までのはずれの分をすべて取り返しそれ以上の喜びをもたらしたと言える。
著者のチクセントミハイ氏の博識ぶりにはびっくりだ。この本は心理学に分類されるのだろうけど、社会学・生物学・歴史・文学など幅広い分野にまたがっている。
最後のほうは意識の進化に関する記述があり、「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」(ASIN:4314009780)に通じる部分があるなあと思っていたが、参考文献にも登場していた。意識の進化が幸福や苦悩を生んだのかもしれない。意識の進化により行動・選択の範囲が広がったことが一方で苦しみを生んでいるというのが非常に皮肉な現象である。本能のままに生きている動物は常にフロー状態にあると考えられると指摘している。

この本を読んでいると、どんな状況にあっても人間はフローになることができると感じたのだが、これはフローになることができる人間のみが生存競争の中で生き残ったためだと言えるのかどうかが気になった。本当に人間とは不思議な存在だ。
文明の進化もフローの結果と言えるようだ。楽しいというのが科学者を研究に突き進ませる原動力になっている。科学研究に多額の資本が求められる現代においてもこの点は変わらない。