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アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅
- 作者: Peter Morville,浅野紀予
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一番面白かったのが一番最後の章である「啓示による意思決定」だ。まず人間は非合理的な意思決定を行うと論じ、いくつかの意思決定の罠を指摘する。
- アンカリング 最初に見つけた情報から過度の影響を受ける。
- 確証 無意識のうちに自分の既成概念を指示するようなデータを探してしまう。
- 記銘性 直近の出来事や、劇的な事件などには過度に影響を受ける。
- 現状 人間は何もしなくてすむ理由を探す傾向がある。
- 埋没費用 過去の過ちをなかなか認められずに、これまでの選択を正当化するような方法で意思決定を行ってしまう。
最近私が読んできた本とかなり重複している。この辺から俄然興味がわいてきた。
グラッドウェルの「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」(ASIN:4334961886)に関する記述もある。この本で紹介されている「シン・スライシング」(確か輪切りのなんとかという訳だったような気がする)に対しては否定的な態度だ。「シン・スライシング」とは非常に薄い経験の断片に基づいて、さまざまな状況やふるまいの中からパターンを見つけ出す無意識の力であると紹介されている。
以下の文章も興味深い。
人間の頭脳は睡眠中に夢を見ている間だけではなく、目覚めているときにも自覚的には意識していない情報を継続的に処理している。このことは実際にすでに知っていることを学んだときに起こる「ほう!」という感覚の理由を説明するのに役立つ。
情報量と意思決定の精度に関する記述も面白い。情報量が増えるほど意思決定の精度も上昇するが、一定の値を超えると逆に精度は低下してしまう。情報過多はマリファナよりも集中の妨げになるとの研究結果もあるらしい。この中で紹介されている、「なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴」(ASIN:4270000384)も面白そうである。
Freakonomicsにも話題は飛ぶ。少しずれるがFreakonomicsの翻訳はいつ登場するのだろう。東洋経済から出版されるとどこかで読んだような気がするのだが。
グラッドウェルのブログでも話題にしていたように、Freakonomicsでは米国の犯罪率の低下は、グラッドウェルの著書で紹介されているような「ブロークン・ウインドウ理論」よりも中絶の合法化による影響が大きいと指摘している。Freakonomicsの著者であるレビット氏は、「銃を所持し、裏庭にプールを持っているとしたら、銃よりもプールのほうが約100倍も子供を死なせる確率が高い」とも指摘している。銃のほうが死亡原因として印象に残ってしまうのも、上記の記銘性によるものなのかもしれない。
無意識のうちに絶え間なく感覚を通過していくすべての情報が、人間の記憶や信念、予測、行動を形作ることを示唆している。人間には生まれつき本能が備わっているが、直感に関しては、一生かけて学習していくことになる。
人間の脳は蓄積した記憶を使って、見たり、聞いたり、触れたりするものすべてを絶えず予測しているのだ。人間の認識は、感覚と、脳の記憶から引き出された予測が組み合わさったものなのだ。