抗生物質が抱える問題

Resistance to antibiotics: The spread of superbugs | The Economist
抗生物質に耐性を持つ細菌が登場するという懸念は、抗生物質が登場したことからあったらしい。現実に耐性を持つ細菌が登場し、そのような細菌に冒された患者を治療するのは非常に手間とお金がかかる事態になっている。細菌が耐性を持つにはそれなりのエネルギーが必要なので細菌自体にも不利に働く。そのため恐れたほど耐性を持つ細菌は発生していないのだが、それで苦しむ患者が多くいることは間違いない。
ではどうすればよいのか。人間に投与されている抗生物質の半分は、無意味もしくは不適切に服用されているという。このように抗生物質を服用すると治療に役立たないばかりか耐性ができやすくなる。ちなみに抗生物質の多くが家畜に投与されている。これも健康な家畜を育てるのには有益であるが、家畜内で耐性を持つ細菌を発生しやすくなるというリスクがある。耐性ができてしまうというリスクを完全に無視するという選択肢もある。どのみち耐性ができた細菌で苦しむ患者は比較的少数であり、抗生物質の投与で助かる人命からすれば些細なものであるためだ。しかし耐性を持つ細菌で苦しむ患者は発展途上国で多く、そのような国では先進国と異なり満足な治療を行うのが難しい。医者が抗生物質を投与しすぎるのを防ぐ方策が必要だ。処方する薬剤の量に応じて医者の収入が増えるような報酬体系を改める必要がある。耐性を持つ細菌に効く抗生物質の開発も必要だが、この分野では最近進展があまり見られない状況にある。製薬会社も患者数が少ないので積極的に開発を行うメリットを見いだしにくいのだ。そのため政府などが、開発を促すインセンティブを与える必要が出てくる。
抗生物質の過剰投与という問題には共有地の悲劇のような色彩を帯びる。抗生物質を服用しすぎて問題が発生するリスクは当該患者には短期的に病気を治療するというメリットと比較すると少ない。しかし耐性ができた細菌が発生し、それが他人に感染するというリスクは長期的には大きくなるためだ。


以前、抗生物質反グローバリゼーションとの関係を紹介した記事が登場していた。このダイアリーにも書いた。