携帯電話革命 第2章始まる

A special report on telecoms in emerging markets : Mobile marvels (The Economist)
非常におもしろかったので一気に読んでしまった。発展途上国での携帯電話の普及が経済成長を加速させるというのがテーマ。すでに携帯電話が経済成長を引き起こすというのはよく知られた話なのだが、音声の会話だけではなくテキストメッセージングのようなデータ通信サービスがさらなる経済成長・社会の変革を引き起こしつつある。この点で注目されるのが携帯電話による送金サービスだ。銀行サービスもろくに存在しないような地域において、携帯電話による送金サービスは日本では想像できないようなインパクトをもたらしているようだ。お金の流れがスムーズになると経済活動も活発になる。送金だけではなくお金もある程度貯めておけるので、銀行口座を持っていない人でも資産の保管場所としても活用できる。富を家畜や貴金属で保存するよりもずっと効率的だ。わずかであっても資産を持てるようになることは、一時的に苦境に陥っても貧困層に陥るのを避けることができる。
テキストメッセージングで、農業や医療のアドバイスを提供するというサービスも情報格差を縮め、生産性を引き上げることにつながっている。
新興国の携帯電話ビジネスは、ある意味、先進国よりも進んでいるのかもしれない。加入者一人あたりの売り上げが先進国と比較すると数分の1以下でありながら、極めて高い利益率を誇っていたりする。徹底的にコスト削減を実現するために、革新的な方法でサービスを提供しないといけないというプレッシャーが新興国の携帯電話会社を鍛えているようだ。インドモデルという携帯電話会社のビジネスモデルが紹介されていたが、これは先進国市場にも浸透しつつある。インドモデルとは徹底的なアウトソーシングを意味する。そのため携帯電話会社はマーケティングと戦略立案程度しか行わない。ネットワークの整備さえもアウトソーシングだ。特定のエリアで一定のキャパシティを外部ベンダーに依頼し、その分の料金のみをベンダーに支払う。ベンダーは複数の携帯電話会社のインフラ整備を一緒に行うのでスケールメリットを通じてコスト削減を実現できる。
さらに、携帯電話を通じた経済成長を加速させるためには、モバイルブロードバンドが必要と指摘するのだが、端末代金の高さやバックボーン回線の不足などまだまだ解決しないといけない問題も多いようだ。