男性の筋肉と性淘汰

Sexual selection in humans : Mr Muscle (The Economist)
興味深い記事。ダーウィンがすごいところは、進化の要因として自然淘汰だけではなく、性淘汰という考え方を主張したところにあると思う。自然淘汰だけなら思いつきそうな気がするが(実際に同時代のウォレスも同じようなことを考えていた)、性淘汰まではなかなか思いつかないのではないか。筋骨隆々の男性は多く存在するが、筋肉も性淘汰の結果ではないか(つまりクジャクの羽と同じようなもの)という研究が登場している。実際に調査したところ、筋骨隆々の男性はそうではない男性と比較して異性のパートナーが多いという。つまり自らの遺伝子を後世に残す上では有利なのだ。しかも筋肉を維持するには代償も発生するという点も筋肉が性淘汰の結果であるという主張を裏付けている。意外な気がするが、筋肉質の男性の方がそうではない男性よりも免疫力が弱いという。だいぶ前に読んだ、福岡伸一の新書では、男性ホルモンであるテストステロンが免疫システムを弱めているという仮説が紹介されていたが、そのあたりに関係するのかもしれない。現在の社会を見ると、男性は必ずしも筋骨隆々という訳ではない。私自身も残念ながらこの見方を裏付けるサンプルの一人である。クジャクの雄の羽とは異なっている。ということは、人間のオスは、性淘汰だけではなく、自然淘汰にも大きく影響を受けていると考えられる。筋肉が貧弱な男性も、長生きできるためになんとかメスを捕まえることができて、遺伝子を後世に残すことができたのだ。