ニュース業界の将来

The news business : Tossed by a gale (The Economist)
米国では新聞業界が深刻な不振に陥っている。天敵である政治家たちからさえ懸念の声が出ているぐらいだ。紙面で読めるものをそのままネットで無料で読めるのだから購読者が減るのは当たり前だが、オンライン広告が成長するからなんとかなると考えたようだが、肝心のオンライン広告は成長するどころか減少している。必ずしも不景気が原因とも言い切れない。検索連動広告に広告を奪われているし、ページ数の増加で広告料金自体が圧迫されているためだ。
Yahoo! NewsGoogle Newsのようなニュースを様々なサイトから集めて表示するサービスは新聞社から見れば他人のふんどしで相撲を取っているように映るが、新聞社のサイトにユーザーを誘導する大きな利点も有している。特にGoogle Newsでは人手を使わずにコンピュータでニュースを収集し分類しているが、特定の分野に特化したニュースサイトも登場しており、新聞社を首になったジャーナリストの新しいキャリアとしても注目を集めている。
ユーザーから料金を徴収するのは新聞社のサイトにとってはなかなか難しい。多くの有料会員を抱えているのはWSJやFTなどごく一部だ。しかし、そのWSJでさえ、全部のコンテンツを有料にするのではなく、潜在的なビジター数を考慮して無料でアクセスできるようにもしている。多くのユーザーが関心を持つような記事は無料にして、ページビューを稼ぎ広告で儲け、反対に関心を持つのがごく少数の限られたユーザーである場合は、有料にしている。この考え方はWSJだけではなく他のサイトでも反映されている。新聞社の破綻でローカルニュースが減少していくと、この考え方に基づくと有料でローカルニュースを提供する動きも生まれてくるかもしれない。米国ではラジオの運営を非営利団体が長年行っている。報道の世界でさえ同じように非営利団体が行うようになってもおかしくはない。
新聞社やテレビ会社が苦況に立たされていると言っても、それはニュースが危機にさらされているわけではない。百貨店がなくなっても、ショッピングという行為は引き続きディスカウントストアや専門店で続いているように、ニュースも提供されるフォーマットは異なっても今後も生き残るのは間違いない。