NHKスペシャル 病の起源 糖尿病

だいぶ前に録画したもの。調べてみると昨年の秋に放映されていたものだった。糖尿病というと肥満を連想させるが、日本の糖尿病患者は必ずしも太っているわけではない。肉食が本格化するのが遅かったのでインシュリンの分泌量が欧米人よりも少なく、肥満になりにくいのだ。そのぶん糖尿病になる時期が早く到来することになる。インシュリンの分泌量が多いと、脂肪細胞に血中の糖が蓄積されるので、血中の糖分が抑えられるらしい。その結果、糖尿病の発病時期も遅れることになる。
インシュリンの分泌量は胎児の頃にある程度決まってしまうというのが興味深いところ。妊婦の栄養状態が悪いと胎児は省エネモードとして成長し、膵臓の成長は抑制されインシュリンの分泌量も減ってしまうという。そんな状態で生まれてしまって、豊富な栄養を与えられると糖尿病になってしまうというから恐ろしい。インドがこの状態に陥っているという。栄養状態が悪い中で生まれたものの、最近の経済成長の中で食生活は飛躍的に改善されたので若い世代の糖尿病患者が増えている。日本でも同様の問題があるらしい。ただ日本の場合は経済的な問題と言うよりも母親のやせたい願望が大きな要因になっているのだが。妊婦になってもあまり太りたくない、太ると元に戻るのが大変と心配してあまり栄養を摂らないと胎児が省エネモードで生まれてしまうことになる。

しかし人間のやることにはすべてトレードオフの関係があるのだなと改めて感じる。農耕を始めたことは人間の歴史の上で最大の革命的出来事だった訳で(ドラッカー先生もそんなことを書いていた)、人類の生活水準の向上に結びついているのだが、それによって栄養過多になり糖尿病患者が多く発生するとは皮肉な話だ。人間とは欲望をコントロールすることがとことん苦手なのかもしれない。