ローマ亡き後の地中海世界(上) / 塩野七生

ローマ亡き後の地中海世界(上)

ローマ亡き後の地中海世界(上)

早速読み始める。さわりだけ読んでみようと思ったらすでに半分程度読んでしまった。下巻は来月下旬まで出ないみたいなので早く読んでしまうと間が持たない。本箱に占めるローマ人の物語がかなり大きく、扱いに困る。たまに読んでみたくなるので売るわけにもいかないし、文庫本で買い直すのももったいない。
この本では、題名の通り、ローマ帝国崩壊後の地中海諸国の動きを描いているが、安全保障を確保してくれる国家が事実上亡くなった状況というのは現代においてはなかなか想像しにくい。たぶんソマリアあたりは今でもそうなのだろうとは思うのだが、日本からはあまりにも遠い。
この本で描かれるのはイスラム勢力に徹底的に痛めつけられるキリスト教社会という構図だが、それなりに(宗教的熱情と略奪品狙いという二つの意図があった)団結するイスラム教徒と異なり、キリスト教徒は内部でのいがみ合いに忙殺されて対イスラムで立ち上がることがなかなか出来なかったという状況が描かれる。何を持って敵と見なすか、俗界を仕切る王と、ローマ法王とは大きく異なっていたようだ。当時のローマ法王はなんとかキリスト教徒を団結させてイスラムに対抗させようと手を尽くすがなかなかうまくいかず同情してしまうほどだ。
厳密にいうとこの本は違うが、ローマ人の物語を読んでいると感じるのが、権力はどのように行使されるべきか、そして権力者の責務とは何かが大きなテーマになっているなという点だ。先日、著者が読売新聞のインタビューに掲載されていた。自分の著作は歴史書でも、歴史小説でもなく歴史エッセイだという。歴史をネタに人間について好き放題語るというのが塩野七生の本の特徴なのだろう。