クオンツ運用の失敗の背景

Buttonwood : Heart of darkness (The Economist)
国際金融市場の動向を知るにはThe EconomistのButtonwoodが非常に役に立つと思う。このコラムだけは欠かさず読むようにしている。細部にこだわることなく全体像をとらえることを優先しているようなコラムである。最初はWSJのHeard on the Streetのようなものかと思ったが似て非なるものだ。
今週のButtonwoodでは、クオンツ運用の失敗の仕組みについて紹介されている。クオンツ運用は高度な数学的手法を用いて高い収益を上げるものと見られていたが、結局はレバレッジ頼みにすぎなかったようだ。リスクを過小評価してしまう傾向も指摘している。正規分布のベルカーブを資産価格の変動率の予想に用いることが多いが、予想以上に大幅な変動が発生しやすいという事実を見過ごしているようだ。結局、リスク管理と言っても肝心な時には役に立たないのだ。

収益性の高い運用戦略があれば、すぐにコピーするファンドが登場して、収益機会は縮小してしまう。そうすると金を借りてレバレッジを高めて収益をかさ上げしないと利益を出すことができなくなる。ヘッジファンドの場合は高い手数料を徴収するだけに、高い収益を求める圧力は一層大きくなってしまう。
レバレッジを高めると、相場が自らのポジションと反対に動いた場合に、持ちこたえることも難しくなる。追い証が発生するためだ。同じような戦略を採用するファンドからポジション精算の動きが強まるので、ファンド同士が互いに首を絞め合うことになってしまう。本来ならこのような場面こそ高い収益を得られるチャンスであり、ポジションを積み増しても良い筈だが、どこまで下がるか分からない以上、そのような行動を取るファンドも登場しない。

Heart of darkness = 闇の奥