格付会社の罪

How Rating Firms' Calls Fueled Subprime Mess (WSJ)
2500ワード以上の長い記事だが面白かった。
サブプライムモーゲージが普及した背景には、格付会社による格付方針の見直しがあったという指摘。返済の優先度が低いモーゲージ(piggyback)でもそれほどリスクは大きくないとの調査結果を受けて、一定限度なら返済の優先度が低いモーゲージを組み込んでも格付けを引き下げないことにした。この方針を受けて、投資銀行は高格付けでありながら高い利回りを求める投資家のニーズに応えるべく、サブプライムモーゲージを組み込んだ仕組み債を大量に製造することになる。仕組み債に組み入れられるモーゲージへの需要が高まったために、住宅取得資金を容易に手に入れることが可能になり、住宅価格が上昇する要因となった。
このような仕組み債では、格付け会社が格付けを付与する際に用いるデータも投資銀行からのものに依存しており、格付会社は投資銀行と一種の「協力」関係の下、高い格付けが得られるように投資銀行にアドバイスを与えていた。期待するような格付けが得られない場合は、投資銀行は他の格付け機関に依頼すると言って圧力をかけることもあったらしい。格付会社にとっては、仕組み債からの売上が半分近くを占めていたために、営業的にも大きな存在だった。
購入した投資家は、プロであっても理解が困難であったためにリスクの判定は、格付け会社が提供する格付けに依存せざるを得ない状況だった。

格付会社と投資銀行の関係は、少し前に問題になった投資銀行内部でのアナリストと引き受け部門の癒着を連想させる。もし、格付会社と投資銀行の間でも同様の問題があれば、格付会社に対する信頼は大きく損なわれるだろう。すでにそうなりつつあると思われるが。投資家からの損害賠償で破綻する格付会社も出てくるかもしれない。