「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史

「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史

「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史

経済成長に必要な4つの要素の紹介の後は、経済成長に先行した国と、先行組をキャッチアップした国、それぞれの経緯を説明している。フランスに関する説明が非常に興味深い。フランスには英国と同じように、経済成長に必要な4つの要素が備わっていた。しかし英国に大きく遅れを取ってしまうことになる。なぜか。超過収益(レント)を求めるように行動してしまったためだという。ビジネスで成功しても、子供に同じようにビジネスで成功することを願うのではなく、公務員などの既得権者にさせることで超過収益を得るように行動してしまった。これでは勤労意欲が失われるのも当然であった。また独占権を民間に恣意的に売り飛ばしたことも産業の活性化を妨げることになった。
スペインも南米から莫大な金銀を得ておきながら、経済成長に結びつけることができなかった。簡単に金銀を得ることができたので、戦争という無駄な出費につながったためだ。商工業を活性化して経済を成長させるという考えにも至らなかった。カトリック教が強く、科学的合理主義が抑圧されたこともマイナスに作用している。

囲い込み運動が農業の生産性を引き上げることにつながったとの指摘が繰り返し出てくる。世界史の授業ではあまり好意的にはとらえられていなかったと思うのだが、共有地を細分化して農民の所有物とすることは、農民の創意工夫を引き出し、生産性を向上させることになったという。共有地の悲劇との言葉があるが、みんなのものだという意識があると誰も大切に扱わなくなる。「レンタカーを洗車しようとする人はいない」との非常に適切な言葉も紹介されている。