20060928

  • タイで軍事クーデターが発生した。この事件を受けて株価は下落し、現時点でもまだクーデター前の水準には戻っていない。しかし外国人投資家の中には、現在は買い場だと見る向きが多い。クーデターの発生により、タイ政局の不透明感が一掃されたと見るからだ。またアジアでは、民主的な政府かどうかは、株価パフォーマンスにはあまり関係ないという事実もある。そのためクーデター直後には外国人の投資資金が市場に殺到している。91年のクーデターの記憶も後押ししている。あのときも、株価は急落した後に急上昇している。もちろんすべての外国人投資家がタイの株式相場に強気姿勢を見せているわけではない。いつ民主化に移行するのか、民営化の動きはどうなるのか、新たな不透明感を生み出しているとの指摘もある。

  • Amaranth Advisorsが天然ガスの投機の失敗により多額の損失を抱えたという事件を受けて、店頭商品先物市場の規制強化を唱える動きが高まっている。ヘッジファンドの多くは電子トレーディングシステムであるICEを用いており、NYMEXと比較して当局による監視が緩いと指摘されている。逆にNYMEXでは建玉に関して厳しい制限が付き、一定量を超えると報告義務も発生する。ICEでは自主的に監視が行われ、問題がある場合は当局に報告するとしているが、建玉制限は存在しない。そのため大きなポジションを抱えることも可能だ。これが市場の安定を揺るがし、価格変動を大きくする要因となっていると批判する声もある。ただ店頭市場の規制強化を行っても、財源不足の当局には充分な監視が行えるのかという疑問もある。

  • ジェネレーションY(18歳から27歳まで)に、401Kのような退職後の生活資金を貯めるのに用いる金融商品を売り込むのは至難の業である。働き始めたばかりということもあり、老後よりも多くの心配事を抱えているのだ。学生ローン・クレジットカードの返済などである。しかし資産運用会社にとっては、ベビーブーマーが退職して、 401Kから資金を引き出すようになると、代わりに誰かが401Kに資金を拠出してくれないと運用資産が減少することになる。そのため様々なアイデアを用いてジェネレーションYの勧誘に乗り出している。加入するとギフト券やiPodをプレゼントするという方法や、運用資産ポートフォリオの中身に応じて自動的に内容が変わるポッドキャストを配信するというサービスや、ソーシャルセキュリティは当てにならないという不安をあおる手法や、両親からの手紙に似せて勧誘する手法など様々である。

  • カリフォルニア州でプロポジション87の是非を巡る議論が激しさを増している。賛成派はシリコンバレーの巨人達で占められ、反対派は石油業界で構成されている。この提案は石油への課税を強化して、税金を代替エネルギーの開発に投資するというものだ。石油業界にとっては大した金額ではないものの、これがきっかけになって政府による介入が増加することを懸念している。賛成派にはKPCBベンチャーキャピタリストも含まれており、代替エネルギー関連企業への投資も行っている。そのため反対派からは自己利益の追求のために提案に賛成しているとの声もある。

  • ヒューレット・パッカードは今月に入って、取締役会におけるスパイ疑惑で大きく騒がれているが、株価はほとんど下落していない。ウォール街のアナリストも強気姿勢を維持している。というのも現在のCEOであるMark Hurd氏になってから、同社の業績は大きく改善しているためだ。主力のプリンター事業が全体の業績に占める比率も低下している。長い間足を引っ張ってきたPC事業やサーバー、ストレージ事業が収益を上げるようになっており、市場シェアも高まっている。株価もCEO交代以降7割以上も上昇している。ただCEOのやるべきことがなくなったわけではない。ソフトウェアやサービス事業の立て直しが残っている。
    前CEOのカーリー・フィオリナの自伝がもうすぐ発売される。「Tough Choices: A Memoir」(ASIN:159184133X)というもの。 本の発売に関してはこれ以上考えられないほどの絶好のタイミングだとBusiness Weekで紹介してあった。