20060829

  • スウェーデンストックホルムで大規模な実験が行われた。交通渋滞を緩和し、大気汚染を削減するために道路の混雑の状況に応じて通行料金を徴収することにしたのだ。これはノーベル経済学賞を受賞したWilliam Vickery氏が提案した方法である。今年の1月から7月まで実験運用が行われ、もうすぐこの結果を受けて正式導入を行うべきか国民投票が行われる。実験ではIBMと政府が共同でシステムを運営した。料金所にはカメラが設置され、乗用車に搭載されたセンサーで料金をカウントする。センサーを搭載していない車の場合はナンバープレートを読み取り、車の登録情報を元に料金が請求される。混雑時には料金が徴収されるものの、オフピークには無料となる。この実験の結果、混雑は緩和し、大気汚染も減少したという。また公共交通機関の利用度も増加した。多くの国からストックホルムの実験を見学するために視察団が訪れた。もし国民投票で否決されたとすると、環境に対する意識が低く公共交通機関が貧弱な他の国ではさらに導入が難しいだろうと考えられている。
    面白い試み。
  • ヒューレット・パッカードは利益の8割以上がプリンターのインクやトナーで占められている。プリンターを低価格で販売し、インクで儲けているわけだ。しかし収益性の高いインクビジネスに目をつけた企業が低価格でインクを販売するようになり、HPも反撃に出ている。インクを販売している小売店やメーカーを特許侵害で訴えているのだ。この傾向は昨年就任した新CEOの下で加速している。インクにはたいした技術がいらないと考えられがちだが、同社によると多くの技術が詰まっているという。化学者を多数起用して、市場で販売されているインクを分析し、特許侵害がないか調査させている。

  • 日本の現代政治史においてもっとも大きな影響力を有すると考えられるのが小泉首相だ。小泉首相の政治手法は、それまでの自民党政治とは大きく異なっている。その小泉首相が9月で退任するが、同氏のような強力なキャラクターがなくても、後継者も小泉首相のような強力な政治基盤を有することができると見られる。小泉首相登場以前に実現した、小選挙区制度や政党への補助金内閣府の創設などが、首相への権限集中を強化しているためだ。小泉首相の元で日本経済は成長したものの、格差が拡大したとの指摘もある。外交政策は米国にとって一番信用できるパートナーとなったものの、靖国神社(yasukuni war shrine)への参拝により中国や韓国との関係は悪化している。
    特に珍しいことは書いていない。日本の政治がPage Oneに登場するとは珍しい。靖国神社がwar shrineと表現されているのが意外だ。
  • ワシントンDCの郊外にある、Thomas Jefferson高校は、数学オリンピックへの出場が他の米国内の高校よりも多い。校内にはスーパーコンピューターまである。多くの卒業生がアイビーリーグに進学するという。このように同校は非常に優れた学業成績を収めているのだが、米国の公教育全般と同じく、予算不足に伴う設備の老朽化が進んでいる。天井からタイルやダクトが落下するという事故も多い。生徒や親からの不満の声も大きい。多くの陳情が寄せられている。しかし予算面での制約により改修は当分行えそうにないのが現状だ。天井だけではなく、トイレもひどい状態だ。教育設備も予算不足の影響を受けている。元素表が古いままで用いられていたぐらいだ。せっかく賞品として獲得したスーパーコンピュータも天井からの水漏れでだめになった。

  • 中国を代表する家電メーカーであるHaier Groupは積極的に拡大策を行っているものの、上場している子会社にはあまり恩恵はなかった。同社の子会社は2社、香港と上海に上場している。このうち、香港に上場しているHaier Electronicsに注目が集まっている。株価が低迷していることに対応して、親会社は子会社に対して資産注入を行うことにしたのだ。親会社が抱える事業(洗濯機など)を子会社に移転することで、売上が急増することになる。今後も資産注入は続くと会社側は発表しており、今後の展開が期待されている。同社は親会社が過半数以上株式を保有しており、資産注入は子会社の株式で代価が支払われるために、持ち株比率はいっそう上昇することになる。ただ家電ビジネスは競争が厳しいことに加えて、原材料価格の上昇が利益率を悪化させているという問題もある。

  • 日本のボーダーフォンの事業を買収したソフトバンク。同社は買収した携帯電話事業の売上が全体の半分程度にまで占めるようになった。この大事な携帯電話事業の利益率が急激に上昇している。数パーセントしかなかった利益率が10%以上になっている。業績が改善したと言うよりも会計処理の変更に伴うものであり、アナリストの不満を買っている。同社は買収した携帯電話事業の固定資産の評価額を半分にまで削減し、その分を営業権に付け替えた。営業権の償却期間は20年で、固定資産の倍になっているので期間損益に与える影響は少なくなる。

  • 屋外にポスターを貼るという野外広告は、広告の中でも一番単純な形態であるものの、成長率は高い。広告業界の中でも野外広告はネット広告に次ぐ成長率を示している。野外広告では単純にポスターを貼るという方法から大幅な技術革新が進行している。この状況を如実に表しているのがロンドンの地下鉄内部での広告だ。CBSが地下鉄内部での広告を独占していたが、先日契約の更新が迫り、再び大手広告代理店の間で入札競争が実施された。入札に当たって、CBSは様々な新技術を導入している。接着剤が不要なポスターはその一つだ。ポストイットで有名な3Mと組んで、地下鉄の風で飛んでいかない程度に密着する一方で、簡単にはがせるポスターを開発した。エスカレーターには歩行者の動きに合わせて内容が変化する薄型テレビ内蔵の広告まで設置している。入札競争ではこれらの新技術を投入したCBSが再び地下鉄広告を独占することになり、すでにロンドン地下鉄の広告は切り替わりつつある。