- 作者: ジャレド・ダイアモンド,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/12/21
- メディア: 単行本
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人口をいかにコントロールするか、これも社会の存続にとって大きな問題になる。人口が増加すると、より多くの食料が必要になりそれが一層の環境破壊につながってしまうためだ。現在において、人口増加がもたらす惨事としてルワンダの大量殺戮も紹介している。民族紛争と誤解されているが、実際には過剰な人口も原因の一つだという。フツ族しか居住していなかった集落でも大量殺戮が発生しており、農地を巡る争いが背景にあったようだ。人口増加により一人当たりの農地が小さくなり、飢餓に陥った人たちが自暴自棄になってしまう。犯罪率とカロリー消費量には逆相関関係が観測されたらしい。もちろん人口増加だけで殺戮が発生するのではなく、遠因の一つとしては無視できないということだ。
同じ島を分け合うハイチとドミニカの違いも面白い。同じ島なのに経済発展の度合いは大きく異なる。環境保護に対する姿勢にも大きな違いがあるようだ。ドミニカも豊かな国ではないのだが環境保護ではかなり善戦している。特に印象的なのがドミニカ人が自発的にボトムアップで環境保護運動を行っていることだ。貧困にあえぐハイチからドミニカに移民が押し寄せて、ドミニカから米国に移民が押し寄せるという構図がある。ニューヨークは既にドミニカ人が本国の首都についで多い町だそうだ。ハイチとドミニカには文化的・人種的な相違も大きく、過去にも衝突が絶えなかったためお互いが協力することがなかなか難しい状況にある。しかしハイチの問題はドミニカに、そして米国に影響を与えるために放置しておくわけにもいかない。
単なる環境破壊に関する警告の書というものだとすればあまり関心は持たなかったのかもしれないが、社会構造と組み合わせているのが私のつぼにはまったようだ。
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎と銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎ももう一度読み返したくなった。来年の楽しみにとっておく。