文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

読み始める。地理的条件が政治体制を規定し、規定された政治体制が問題解決(環境破壊など)を実行できるかを規定する。江戸時代の日本が森林資源の確保に成功したことも紹介している。環境破壊を食い止めることが出来るかどうかはボトムアップ方式による運動か、トップダウン方式による圧力かいずれか方式を採用できるかどうかに依存しているようだ。人口が小さく国土も狭いとボトムアップ方式がうまく機能するし、中央集権国家(江戸時代の日本)だと全体を見渡せる政治家が地域ごとの利害関係に左右されることなく全体としての環境保護を図ることができるためだ。
人口をいかにコントロールするか、これも社会の存続にとって大きな問題になる。人口が増加すると、より多くの食料が必要になりそれが一層の環境破壊につながってしまうためだ。現在において、人口増加がもたらす惨事としてルワンダの大量殺戮も紹介している。民族紛争と誤解されているが、実際には過剰な人口も原因の一つだという。フツ族しか居住していなかった集落でも大量殺戮が発生しており、農地を巡る争いが背景にあったようだ。人口増加により一人当たりの農地が小さくなり、飢餓に陥った人たちが自暴自棄になってしまう。犯罪率とカロリー消費量には逆相関関係が観測されたらしい。もちろん人口増加だけで殺戮が発生するのではなく、遠因の一つとしては無視できないということだ。
同じ島を分け合うハイチとドミニカの違いも面白い。同じ島なのに経済発展の度合いは大きく異なる。環境保護に対する姿勢にも大きな違いがあるようだ。ドミニカも豊かな国ではないのだが環境保護ではかなり善戦している。特に印象的なのがドミニカ人が自発的にボトムアップ環境保護運動を行っていることだ。貧困にあえぐハイチからドミニカに移民が押し寄せて、ドミニカから米国に移民が押し寄せるという構図がある。ニューヨークは既にドミニカ人が本国の首都についで多い町だそうだ。ハイチとドミニカには文化的・人種的な相違も大きく、過去にも衝突が絶えなかったためお互いが協力することがなかなか難しい状況にある。しかしハイチの問題はドミニカに、そして米国に影響を与えるために放置しておくわけにもいかない。


単なる環境破壊に関する警告の書というものだとすればあまり関心は持たなかったのかもしれないが、社会構造と組み合わせているのが私のつぼにはまったようだ。

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎ももう一度読み返したくなった。来年の楽しみにとっておく。