パナマ運河拡張

The Panama Canal : A plan to unlock prosperity (The Economist)
パナマ運河の過去と現状、そして現在進行中の拡張工事でパナマ経済がさらなる飛躍を見せることができるかという記事。非常に興味深い。パナマ運河はフランスが建設を始めたものの途中で撤退し、その後アメリカが引き継ぎ完成させ、10年前までは米国が運営していたという経緯がある。しかしカーター大統領の頃に締結した合意により、10年前パナマ政府に運河の管理が移管された。当初はパナマ政府が適切に管理できるのかという不安があったが、想像以上の成功を収めている。運河通過に要する時間が短縮され、通行する船舶数も増加、付加サービスの提供により収入は増加し、パナマ政府にとっては大きな収入源となっている。ただパナマ運河スエズ運河と異なり、大西洋側と太平洋側の間に山があるので、そこを超えていかないといけない。そのために、大きなプールに船舶を誘導し、プールの水位を押し上げて船舶を上昇、反対に船舶を下降といった面倒な作業を行う必要がある。そのため通過できる船舶の大きさは収納できるプールの大きさに規定されてしまうという問題がある。タンカーやコンテナ船の巨大化によりパナマ運河で運行できないという問題も表面化しつつあった。そのため運河の拡張工事が計画され、環境面に与える影響も懸念される中、国民投票で圧倒的多数の賛成で拡張工事にゴーサインが出された。拡張工事が完了して巨大タンカーなどが通過できるようになると、パナマ運河の地位はさらに高まることになる。地域の物流のハブとしても大きな成長が見込める。また北米と南米を結ぶ場所であるため、光ファイバーが多数パナマを通過しており、通信環境が優れている。そのためコールセンターなどの産業も成長している。
パナマ運河によりパナマ政府は大きな収入を手にしており、運河関連の産業も成長しているのが、パナマの問題は依然として大きい。ジニ係数で見ると所得格差が非常に高い。パナマ運河の管理で見せた効率的な組織運営が、他の政府機関では実践できていない。汚職が多いのだ。また容易に運河からの収入が入っているので、国民の合意や納得が必要な税収を拡大させようという動機に欠けるという問題もある。