アイルランドの現状と将来

Ireland's crash: After the race | The Economist
この記事を読んでなんかしんみりしてしまった。欧州の中でも貧しい国だったアイルランドが、適切な経済運営により急成長を遂げ、欧州の中でも先進国に躍り出たのはそれほど昔のことではない。しかし高成長は不動産バブルにつながり派手に破綻してしまった。アイルランド人にとってはここ10年程度の出来事はまさに一炊の夢といったところなのだろうかと考えてしまった。
ただ、経済破綻があったものの、The Economistの同国に対する予想はそれほど悲観的ではない。人口も若いし学歴も上昇してきた。また通貨切り下げができない中、実質賃金の引き下げで競争力も回復している。すでに経常黒字に転換している。また他のEU諸国からの批判もあるものの低い法人税を通じて投資を呼び込むという経済政策も変わりはない。
少し前にもNew York Timesに掲載されていたが、アイルランド人が多数欧州以外の国に出稼ぎに出ているという。自国で食えなくなったら外国に出て行くというのはアイルランドの長年の伝統だ。出稼ぎに行かなくても自国でまともな仕事にありつけることができるようになったのも比較的最近のことにすぎない。
面白いのが、アイルランドは海外からの移民に対して寛容的であるという指摘だ。ポーランドから多数の移民がやってきても特に気にしないどころか、今まで海外に出稼ぎするしかなかった自分たちの国に、出稼ぎにくるようになったという事実がアイルランド人のプライドをくすぐるらしい。
また、ギリシャやパリのように大規模なデモがないというのもアイルランドの特徴だ。この背景には同国の人口が少ないという点があるという。人々の憎悪を集める人物にとっては隠れる場所がないことを意味する。そのため、怒りが直接本人にぶつけられるために、わざわざデモをするまでもないことらしい。この点は、反対に政治の矮小化ももたらしている。国会議員でありながら、地方議会のような地域密着型の政治活動をする必要があり、大局的に国全体を見た政治を行うことを難しくしているためだ。