金融危機・不況の中で、保守派が勢力を維持しているのはなぜか

The centre-right : Old dogs and new tricks (The Economist)
the economistの題名がなかなか理解するのが難しいが、この記事は"You can't teach an old dog new tricks"をもじったものだろうと思う。この記事はthe economistらしい大局的な視野で書かれており非常に興味深い。
世界的な金融危機・景気後退は、保守派が進めてきた新自由主義の失敗とも受け止められる。そうであれば当然、そのような政策を進めてきた保守派が政界で存在感を薄め、左派勢力が増大すると容易に想像がつく。しかし今までのところそうはなっていない。数少ないのが民主党が勢力を伸ばした米国である。そもそも、金融危機・景気後退を受けても有権者は必ずしも市場・資本主義を否定するイメージを持っている訳ではない。しかも欧州では保守というか中道右派は、ストレートに市場経済バンザイといったぐあいではなく、国民を市場経済の荒波から守るという福祉国家を進めてきたという伝統がある。興味深いのは新自由主義を進めてきたサッチャーの政策は、英国の保守党の伝統には反しているという指摘だ。また欧州では保守派も福祉国家大きな政府という左派的な部分も取り込んでいるのにかかわらず、米国ではそうではない。それは米国には封建社会の時代がなかったために、市場経済による社会の崩壊という経験がないために市場経済に対する恐怖感が少ないためではないかとのおもしろい指摘もある。