ロンドンの金融センターとしての地位が危うい

Financial centres : Foul-weather friends (The Economist)
London as a financial centre : The real windfall (The Economist)
金融センターとして、ニューヨークさえ追い越すと見られていたロンドン。活力ある金融センターとして成長したのは偶然によるところも大きい。1960年代に米国の規制強化によりユーロドル市場が誕生し、ロンドンがユーロ市場を押さえることができたのが大きな転機となった。多くの金融機関がロンドンに進出し、世界中の富裕層がロンドンの住むようになり、英国政府に大きな税収をもたらした。ただし最近は雲行きが怪しくなっている。金融危機をきっかけに金融業界に対する世論が急変したためだ。銀行が支払うボーナスに特別な課税を行ったり、金持ちに対する課税も強化、さらには金融機関に対する規制の強化も予想されている。このような変化を感じ取り、金融業界ではロンドンを見捨てる動きさえ出てきた。税金の安さを売り物に、ロンドンで働く銀行員をヘッドハントしようとする外国の金融機関も存在する。今のところは他国でも金融機関への締め付けが厳しいだけに、ロンドンからの流出は大きな問題にはなっていない。しかし必ずしもロンドンでしかできないという金融ビジネスが存在しないというのも確かだ。市場の大きさだけを考えると米国が有利だし、今後の成長性を考えるとアジア市場に拠点を持った方が確かだ。いわば棚からぼた餅のような税収をもたらしてくれる金融ビジネスを追い出してしまうような政策は、政治家にとって一時的な人気取りにはなるかもしれないが、税収を減らすだけで、金融業界業界以外の国民の税負担を増すだけになるだろう。