美術品市場と株式市場の相似

A special report on the art market : Suspended animation (The Economist)
美術品市場に関するスペシャルレポート。一番興味深かったのが美術品市場の構造に関する箇所(New or secondhand?)だ。株式市場を連想させる。美術品市場にもプライマリー市場(発行市場)とセカンダリー市場(流通市場)がある。すでに亡くなってしまった芸術家の作品がプライマリー市場に出ることはもちろんないが、現在活躍中の芸術家の場合は、新作はプライマリー市場に作品が登場することになる。値上がり益狙いで購入するような収集家は敬遠されるので大金を積んでも作品を入手できないというのが、まるで短期的な利益狙いで売買を繰り返す投資家にはホットなIPO銘柄があまり割り当てられないという株式市場の様子に似ている。画廊がプライマリー市場を仕切っているのだが、芸術家にとってはどの画廊と仕事をするのか、キャリア形成の面では大きな意味を持つ。これは企業がどの投資銀行を通じて上場するかという問題に似ているようだ。画廊は契約した芸術家の作品をどのような収集家にはめ込むのか、いろいろ考えを巡らすようで(頻繁に転売されると、もし価格が上昇したとしても芸術家のキャリアに悪影響を与えかねないし、どんな収集家が保有しているかが当該作品の価値にも大きな影響を与えるという性質もある)、これも安定株主工作を進める幹事証券会社のように見える。
ただし、このような構図は、IPO市場と同じように変わりつつあるようだ。外部からは何が行われているのかよく分からない不透明な体制(つまりリレーションシップに基づいた取引)から、よりオープンな市場(アームスレングスベースの取引)への移行が進んでいる。