獄中記 / 佐藤優

獄中記 (岩波現代文庫)

獄中記 (岩波現代文庫)

この前休日出社した時に、待ち時間が長かったので読み終えてしまった。「国家の罠」よりは愚痴も多くなる。ただ独房の中に閉じ込められてそれほど苦しんでいるようには見えない。それどころか読書や勉強に専念できて楽しんでいる様子さえうかがえる。拘置所内での生活は当然のことながら制約が多い。コーヒーが自由に飲めない(著者には大きな問題だったようだ)。独房に持ち込める本の数にも制限があるし、外国語の本は一切禁止、ノートの購入にも制限がある。しかしこのような制約を逆手にとって語学などの勉強に打ち込むのだから転んでもただでは起きない男である。西村検事も難儀するはずだ。出所した後にも、独房のような勉強部屋を作りたいとさえ書いている。
拘置所の食事がうまそうに描かれており、著者によると旧ソ連のホテルよりもよほどうまく、係員の対応もかなり良いとのこと。「国家の罠」では取り調べが長期化して、西村検事の顔色がどんどん悪くなっていく(著者に愚痴を言うシーンさえある)一方で、著者は独房の中で規則正しい生活、栄養価の高い食事を取ることでどんどん体調が良くなっていくという記述があり笑えた。どちらの立場が上なのかよく分からない。

メモ:

  • 一つの時代がどのような時代であったか認識がされるのは、その時代が終わりに近づいたとき。
  • イスラエルには死刑がない。人が人を裁く際には間違いがつきものという知恵によるものという。