国家の罠 / 佐藤優

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

結構分厚い文庫本であるが、二日程度で読了。以前より読んでみようと思っていてamazonの欲しい物リストにも入れていたのだけど、なかなか読む時間もないだろうと思っていて購入するのを控えていた。国策捜査の被害者が書いた本だけに、検察や外務省に対する恨み辛みが満載なのではないかとも予想しており、そのことも躊躇させる一因だった。しかし最近、このエントリーを読んで、なんか無性に読んでみたくなり買ってみることに。
予想以上のおもしろさで、寝不足気味になるほど先に先にと読み進めることができた。予想していた恨み辛みは一切ない。じつは一カ所だけあったと記憶している。少々変わったところがある西村検事(佐藤氏の取り調べを行った検事)が上司に評価されていることをうらやんでいる場面だ。自分も外務省で理解ある上司や同僚に囲まれていればもっと仕事ができただろうといったようなことを述べている。
自分を取り調べした西村検事に対しても特に恨みなんてものはなかったようで、自分も含めて国策捜査という巨大なゲームの中での一人の役者にすぎないと割り切っているようだ。敵だけれども尊敬しているとさえ書いているのが印象的だ。
ムネオハウスがなぜあんなにぼろい掘っ立て小屋だったのか、という疑問も解けた。それ以上に鈴木宗男という議員をよく知ることができたのもよかった。失礼ながら外見ではそれほど立派な政治家には見えないのだけど、佐藤氏がここまで惚れ込むだけの政治家の力量があったのだろう。