自閉症患者が見せる特殊能力

Autism and extraordinary ability : Genius locus (The Economist)
難しい文章だが興味深いことがいくつか指摘されている。自閉症患者がある特定の分野で特殊な能力を見せることはよく知られている。サヴァン症候群である。しかし自閉症と秀でた能力にはどのような関係があるのか、よく分からなかった。自閉症にはいくつかの診断基準があるが、そのうちコミュニケーション能力の不足や他人の心を読む能力の不足などが、特定の分野に秀でた能力を示すことにつながっているのではないかと見られていた。しかし最近では、もう一つの自閉症の診断基準であるRRBI(restrictive and repetitive behaviours and interests)というものが関係しているのではないかとの指摘が出てきたという。これは自閉症患者が特定の行為に飽きることなく集中して繰り返すような傾向である。健常者(neurotypical)が同じように認識してすぐに飽きてしまうような行為を、自閉症患者は異なる物として認識するが故に繰り返し行うことも苦にならない。マルコム・グラッドウェルが新著で指摘したように、1万時間練習すると誰でもある分野ではエキスパートになれるというから、自閉症患者が繰り返し特定の行為を繰り返すことでその分野でエキスパートになってしまうことも意外なことではない。サヴァン症候群が示すような特殊な能力を健常者も身につけることが出来るかどうかと言う点でも研究が進んでいる。鬱病患者などに実施される、脳の一部に磁気をあてるという行為がサヴァン症候群が見せるような能力を引き出すとの研究もある。ロンドンのタクシー運転手は膨大な道路を覚えていないと免許がもらえないので、どのように記憶しているのか研究が行われたらしいが、道路を覚えることの代償として言語能力がバス運転手よりも低いとの結果も出ている。特殊な能力を身につけるには犠牲にしなくてはいけないことも大きいようだ。
記事の一番最後の文章に少し感動する。




アマゾンで検索すると、グラッドウェルの新著は来月翻訳版が登場するようだ。

天才!  成功する人々の法則

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著者よりも翻訳者の顔写真が大きく出ているというのがえげつない感じだ。