Nanoを発売したものの問題山積のTata Motors

The Tata Nano : The new people's car (The Economist)
昨年年初にTata MotorsはNanoを発表した。ようやく販売までにこぎ着けたのだが、発表当時とは市場環境が様変わりしている。公約である10万ルピーという価格はなんとか守ったものの、一番低価格のモデル(エアコンなし)でしかこの価格では買えない。しかも10万ルピーという価格は工場出荷時点での値段なので、一般消費者が手にするにはこれに税金や輸送費も負担しないといけない。住民の反対運動により工場を移転させる羽目になったのでコストも予想以上に上昇し、生産台数も最初のうちは低い水準にとどまる。どのみちNanoの利益率は低いので生産台数が低水準になること自体は大した問題ではないが、それ以上にTata Motorsにとって頭の痛い問題が、主力のトラック販売が急減していることにある。加えて英国のジャガー・ランド・ローバーを買収した負担が重くのしかかっている。買収したとたんに金融危機の影響でジャガーの売り上げが急減速している。英国政府からの支援も要請しているほどである。信用格付けも引き下げられて資金繰りも苦しい。ただNanoの販売において同社は多額の前受金を得ることになったのが同社にはプラス材料となった。前受金を払い込んだ顧客には金利を支払う必要はあるものの、市場から調達する場合と比較すると低い。

前受金を取って資金繰りをつけるというのが面白い。German banking : Finance on four wheelsという記事では、ドイツの自動車会社が子会社の銀行を通じて多額の預金を獲得していると指摘している。高い金利を提示して普通の銀行から預金を奪っているようだ。銀行部門の規模が大きくなると、何かあった場合に政府が救済してくれるとの思惑もあるようだ。