不景気により難しくなる移民政策の転換

Immigration : The border closes (The Economist)
米国とメキシコのあいだの国境を越えて、不法に米国にやってくる人の数が減少している。役所は自らの取締りの効果を賞賛しているが実際のところは米国の不景気という経済問題が大きな影響を与えているようだ。正確にはもちろん米国内の不法移民の失業率は分からないが、ヒスパニックだけを見ると黒人や白人の失業率を大きく上回っていることが分かる。オバマ政権は移民政策の改革を唱えており、ヒスパニックの中では民主党支持が多いだけに、なおさら改革を進めることには大きな動機がある。ただ一見したところ、不法移民の数が減少していることは移民政策の改革を容易にする筈だが、実際には逆に難しくなると考えられる。2007年に瓦解した移民政策の転換には、様々な層の妥協で構成されており、米国内に住む不法移民の合法化、国境警備の強化、受け入れる移民の数の増加という3点で成り立っていた。しかし最後の移民の数の増加というポイントは、米国内の失業者数の増加により政治的に受け入れることが難しくなっている。過去の経緯を見ても、移民の受入数の増加は、失業率が低い時にしか実現できていない。