ショッピングを科学する

The science of shopping : The way the brain buys (The Economist)
面白いけど以前にも同じようなことを読んだような気もする。「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」(ASIN:4152083352)にも似たようなことが書いてあったかも。お客に質問すると自分は様々な情報を元に合理的にどの商品を買うべきか判断していると答えるが、実際には必ずしも合理的な判断をしているわけでもなく、そこに小売店のつけいる隙がある。面白いのが日本でもそうかもしれないけどスーパーマーケットの中で焼きたてのパンを提供するところが増えているという指摘だ。実際に焼くのは冷凍されたパンの素であり、大規模な大型パン釜で焼いた方が効率的なのになぜか店内でパンを焼く。これは焼きたてのパンの匂いを店内に充満させるためらしい。パンが売れるのは当然で、食欲が刺激されてさらに多くの食品が売れるらしい。なんかずるいと思ってしまうが。ウナギ屋みたいなものか。あと客が店内に滞在する時間と売上がどのような関係があるのか、これを調べるのはなかなか難しいのだが、携帯電話端末から発信される電波(通話していなくても携帯電話は基地局に電波を送信する)を捕捉することで計算できるという話も興味深い。だいぶ前に、交通渋滞をリアルタイムで把握するために同じような方法を利用しているという記事が掲載されていたが、携帯電話が様々な二次的利用で用いられていることが分かる。スーパーマーケットではどこに売りたい商品を陳列するのかは各社それぞれノウハウを持っているようだ。棚の中でも目線にある場所はよく目立つのでここが一等地とも言えるのだが、スーパーは納入業者から陳列代を取るので、スーパーマーケットは小売店でありかつ不動産屋とも言えるかもしれない。監視カメラは万引き犯をつかまえるためだけではなく、客の行動を分析するためにも用いられているという指摘もどこかで読んだような。目当ての商品に一目散に歩いてゆくお客は、店内での販売促進はあまり意味が無いという。店に来るまでにすでに意志決定が行われているためだ。あと、あまりにも似通っていてどちらを買えばよいか判断できない場合は客はどちらも買わないという決断を下しやすいという指摘も興味深い。もちろん小売店には困った状況なので、わざと駄目な商品も置いておくらしい。そうすると判断も容易になりお客もハッピーということになるという。買い物とは関係ないが401Kで提供する投資商品が多すぎる場合にも同じようなことが発生するとWSJに載っていた。混乱して401Kに加入しなくなるそうだ。(現在の金融市場の混乱を見ると加入しない方が良かったかもしれないが)



スーパーマーケットの話を読んでいて思い出したが、国力を見るには、その国のスーパーマーケットを見れば良いと言ったのは東海林さだおだったか。何気なくスーパーマーケットで買い物しているが、よくよく考えるとすごいことが行われている事が分かる。販売されている商品には多くの人が関わっており(生産・営業・物流など)、品切れを起こすことなくスーパーマーケットに商品が並べられるためにはほとんど無数と呼ぶほどの品物があるべき時にあるべき場所に存在していることが欠かせない。国力というか、その国のマネジメントの基礎体力というものがスーパーマーケットに現れてくるのだろうと思う。