経済活動の基盤は他者への信頼にある

Trust : The faith that moves Mammon (The Economist)
今週のThe Economistの記事の中で一番面白かったかもしれない。金融システムの基礎には、金融機関に対する信頼がある。そんなあやふやなものを基礎にしているのだから、もっと頻繁に金融危機が発生しそうな気がするが、実際はそうではない。また金融に限らず、現在の経済活動には信頼が大きく横たわっている。たとえばカンバン方式も他社が決められた時間に必要な部品を持ってきてくれるという信頼があるからこそ成り立っている。このように経済にとって大事な他者への信頼という感情はどこから生じるのか。だいぶ前に読んだ「つきあい方の科学」(ASIN:4623029239)に出ているように、デフォルトで他者を信頼するほうが繁栄する可能性が高いので、人間にはそんな傾向が備わっているのかもしれない。また返報性の法則に似たような要因も働いている。つまり人間は他人から親切にされると親切にしたがるという傾向だ。
景気変動は、いわゆるアニマル・スピリッツだけではなく、他者への信頼度合いの変化によってももたらされるとの指摘もある。金融機関への信頼が低下するということは、その他に対する信頼も低下するということも意味するのだろうか。

しかしこの記事で紹介されているPaul Seabrightという学者が書いた"The Company of Strangers"という本は面白そうである。日本語訳は出ていないみたいだが、shorebird氏による書評(http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20060307)が出ている。目の付け所が鋭い。