金融権力

金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書)

金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書)

これもトップポイントの最新号で紹介されていた。いきなり直接金融の問題点は長期資金の確保が困難になるということだと書いてある。要約が間違っているのかと思いきやアマゾンのカスタマーレビューでも同じ事が指摘されていたので本当に書いてあるのだろう。この一文だけでもこの本の信憑性には大きな疑問を感じてしまう。要約を見る限りでは岩波的なサブプライム問題の入門書と言った感じだ。反米・反グローバリゼーション・反資本主義といった匂いを感じる。The Economistとは反対の見方である。




話題はずれるが金融市場を見ていて面白いと思うのが、一種のパラドックスを感じることだ。金融市場には常に危機の可能性を内在しているが、その可能性を取り除くことは市場の機能不全を招く。もちろん危機が発生すれば市場として機能しないので、機能する市場というものは非常に微妙なバランスの上に成り立っていることが興味深い。たぶん将来にはサブプライムモーゲージが引き金となった金融危機は発生しないと思うが、危機自体は何度も繰り返されるだろう。危機が起こらないように対策もいろいろ出てくるのは確実だが、対策が万全だと市場参加者に受け止められてしまうと、危機は生じないとの認識が広まり(つまりトラブルになっても当局が助けてくれる)、逆説的だが危機を発生させる可能性が高まってくる。


金融危機は過去から何度も発生しているが、登場人物は変われど演目は同じだ。つまりレバレッジのかけすぎが最大の原因だ。どんなにサブプライムモーゲージがひどい代物であったとしても金を借りてまで大金をつぎ込まなければ大惨事にはつながらなかった。「レバレッジに生きる者はレバレッジに死す」である。しかもその借金が短期資金であったことがアキレス腱となる。すぐに返済しなければならない資金で、償還までの期日が長い資産を購入しているというミスマッチがあるため、資金借り入れのサイクルが回らなくなるとすぐに行き詰まってしまう。しかし金融業の利益の源泉の一つが、このミスマッチであるので排除することも難しい。儲けも無くなってしまうのだ。