- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1984/09/27
- メディア: 文庫
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この点をのぞいては文句なしのおもしろさだった。項羽と劉邦ともに著者による脚色がかなり含まれていると思うし、そこに著者本人が考える理想の指導者像というものが込められているのだろう。無能とは才能の一つなのではと考えてしまう。劉邦は強いリーダーとは正反対のような人物で、籠城している時にも部下に泣き言を平気で言ってしまうような男だ。それを部下が慰めるという光景が少し楽しい。
戦に勝つことが苦手(劉邦は項羽恐怖症とも言える状態にまでなっていた)という自己認識は、独立勢力との連携や兵站の重要視、支配地域への善政、大胆な権限委譲という行為に結びついている。戦闘で負けて戦争に勝つといった感じか。何となく劉邦にカエサルに似たものを感じてしまう。
四面楚歌、馬鹿、刎頸の友、韓信の股くぐり、背水の陣などのエピソードもこの時代に生まれたもの。四面楚歌で項羽は亡くなったのかと思っていたが、実際にはそうではなく、四面楚歌の中、強行突破して脱出に成功している。その後すぐに追っ手に捕まる訳だが。四面楚歌は漢の策略と思っていたが、自然にわき上がってきたのではないかと著者は見ている。
高校生のころ、世界史を2年間も勉強したにもかかわらず、この時代の状況はだいぶ忘れていた。諸葛孔明もこの時代の人物かと思っていたくらいだ。
映画化されたものはないのかと探してみたら、「項羽と劉邦 ~その愛と興亡~」(ASIN:B000197HTM)というDVDを見つけたツタヤに置いてあるかどうか。
今度は三国志でも読もうか。