人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (中) (NHKブックス)
- 作者: スティーブン・ピンカー,山下篤子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/08/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 3人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (40件) を見る
「苦しみの根源はどこにあるのか」を読んでいて、気づかされたことがある。以下の文章だ。
私たちが空腹を感じ、食べることを楽しみ、たくさんのすばらしい味を感じる味覚をもっているのは、進化の歴史の大部分の期間、食べ物を獲得するのがたいへんだったからである。私たちは通常、酸素に対しては、生存に不可欠なものであるにもかかわらず、熱望や喜びや魅力を感じないが、それは得るのが難しくなかったからだ。肉親や配偶者や友人をめぐる対立にも同じことが言えるのではないだろうか。
それぞれの夫婦が別の島に住み、生まれた子供は成熟すると別の島に離れて帰ってこないという種があるとする。この夫婦の遺伝子上の利害は同一だから、夫婦間の対立は発生せず、この上ないロマンティックな愛情が進化によって与えられるだろうか?そのようにはならない。この場合、夫婦は個体の細胞同士の関係に似たものになると考えられる。心臓の細胞と肺の細胞は完璧な調和を保つために、恋に落ちる必要はない。
選択の自由があるからこそ、恋が発生するのだろう。選択の自由が存在しない場合(孤島の夫婦のような)は、恋をすることは浪費になるので、進化上淘汰されてしまうのではないか。酸素を吸う際に喜びを得られないのと同様に。