20060823

  • トム・クルーズの映画制作会社であるCruise/Wagner Productionsは、パラマウントから契約を打ち切られることになった。両社は10年以上の長きにわたって良好な関係を築いてきたが、トム・クルーズの最近の奇行(サイエントロジーの宣伝など)にはパラマウントの親会社であるViacomの会長も耐えきれなかったようだ。奇行により最近公開されたミッション・インポシブル3の興行収入は過去2作と比較して大幅に低くなっている。Cruise/Wagner Productionsはパラマウントときわめて有利な条件で契約を結んでおり、コスト負担が大きい。そのためトム・クルーズといえども満足な成績を収めることができなければリストラされてしまう。Cruise/Wagner Productionsは今後、ヘッジファンドから資金を受け入れてより制作面で自由度を確保して映画制作を行うという。Viacomの会長であるレッドストーントム・クルーズは親交が深く、会長もクルーズのことを決して悪くは思っていないようだ。今回の契約の打ち切りの発表でも同氏の俳優としての力量を高く評価している。
    トム・クルーズがいかに映画制作で稼いでいるかは、「ビッグ・ピクチャー―ハリウッドを動かす金と権力の新論理」(ASIN:4152087005)にも詳しい。
  • 世界的に原油生産の現場では人材不足が目立っている。政治の混乱も人材不足に拍車をかけている。ベネズエラではストライキを受けて熟練エンジニアを多数解雇した。イランではホメイニ革命を受けて、多くの技術者がイランを去っている。しかし人材不足がもっとも深刻なのがイラクだ。多くの技術者が殺害または国外に去っているために、イラク原油生産に大きな支障をきたしている。米国のイラク侵攻以前の水準にさえまだ戻っていない。侵攻後米国がバース党の党員を公職から追放したことも人材不足につながっている。政治的にコネのある人材が石油関連の役所や企業のトップに任命されたことも、経験不足から混乱をさらに拡大させている。

  • 海外進出を進める中国企業は、海外の著名ブランドを買収しているものの必ずしも成功しているとは言い難い。代表例がLenovoによるIBMのパソコン事業の買収と、TCLによるRCAとトムソンの買収だ。しかし中国企業すべてが海外でのM&Aに失敗しているわけではなく、失敗したからと言ってM&A熱が冷めたという訳でもない。自社で海外市場を開拓するよりは買収した方が効率的だからだだ。Lenovoの失敗は、コスト削減が予想以上に進まなかったことと、IBMというブランド名を早いうちに切り捨ててしまったことにある。現在はDellから経営陣を招聘してリストラを進めている。TCLの場合は、薄型テレビへの移行が急速に進んだことで市場の変化に対応できなかったことが原因だ。

  • 中国では、消費財の多くが外資系企業に牛耳られているのとは反対に、ネット市場では現地企業が外資系を押さえてシェアを高めている。この背景には、中国政府がネット企業における外資規制を行っていることに加えて、検閲制度が存在することがある。しかしこの2点以上に大きな要因が、中国市場特有の要因に外資系企業が対応できていないという問題である。外資系企業は現地スタッフに権限をあまり委譲していないために、現地固有の要因に対応することを困難にしている。外資系に対抗している現地ネット企業の代表がDangdang.comだ。99年にアマゾンを参考に創業したオンライン書店は、他の現地企業を買収したアマゾンを上回る成長率を見せている。中国市場では配送システムは複雑なので個別の交渉が必要だったことや、クレジットカードの普及が低かったために現金払いという支払い方法を用意していく必要があった。これらの特殊要因に適応できたことが成長の原因と見られる。
    古い記事だが、http://www.economist.com/business/displaystory.cfm?story_id=E1_NDTNPGSがDangdang.comを詳しく紹介している。
  • 来年に登場するMicrosoft Vistaはメモリーに対する需要を増加させると期待されている。Windows XPに比べてメモリーを倍以上必要とするためだ。加えてパソコンの買い換えも新しいOSの発売と同時に発生すると予想されている。これらの好材料のためにすでにDRAM価格は上昇に転じている。この恩恵をもっとも大きく受けるのが台湾のDRAMメーカーであるProMOSだ。同社はDRAMメーカーとしては小規模であるものの、最近生産能力を急激に拡大させており、需要増加の追い風を受けることができると期待されている。同社は台湾の店頭市場で売買されているために、今までは外国人投資家の関心も低かったが、最近GDRの発行で一気に外国人持ち株比率も上昇している。株価も上昇しているがPERを見ると同業他社よりも低いためにまだ上昇余地は残っているとの指摘もある。台湾のファウンドリーであるUnited Microelectronics(UMC)も同社への出資比率を高めている。

  • ヘッジファンドを舞台にした詐欺事件が相次いで発生しているが、詐欺の被害にあった投資家たちは、勝ち逃げした投資家たちを訴えている。不当に得た利益なので返還するように求めている。場合によっては利益だけではなく元本までも返還するように求めている場合もある。どのような判例を、詐欺で破綻したヘッジファンドに適用できるのかはっきりしないので、返還を求める訴えが認められるかどうかはまだ不明な部分も大きい。Lipper Convertiblesというヘッジファンドでは、シルベスター・スタローンジョン・キューザックといった俳優も投資しており、早いうちに利益を得て解約している。彼らも利益の返還を求められている。

  • 動画配信サイトの成長の背景にはLimelight Networksという企業の活躍がある。同社は動画を効率的にネットで送信するサービスを運営している。顧客にはMSNBCYouTubeMySpaceFacebookなどの有名サイトが含まれている。同社の成功の秘密は他のコンテンツデリバリーサービス会社(akamaiなど)と比較して、動画配信に特化していることと料金が安い点である。ネット上でビデオをみることが増えており、この恩恵を受けている。しかしakamaiは同社が特許を侵害しているとして訴訟を起こしている。しかし現在のところは訴訟を理由に契約を解除した顧客は存在していない。最近、同社にはゴールドマン・サックスのファンドも出資している。