情報の文明学

情報の文明学 (中公文庫)

情報の文明学 (中公文庫)

読了。一日で読みきった感じだ。ひらがなが多く平易な文章なので読みやすい。逆にひらがなが多すぎて少し違和感も感じるが。
本書で主張していることは、最初に農業が誕生し、その後工業が生まれ、これからは情報産業が優位になるということだ。現在、このような主張を聞いてもなんら違和感はなく、「どこがすごいの」と感じてしまうが、1962年に発表されているということが大きなポイントになる。今から振り返ってみたも、1962年において情報産業ということばがどのような印象を与えたのかは知る方法もない。その当時はコンピュータは貧弱だっただろうし、情報産業の最先端と言えたのが民間テレビ放送だったのだ。
脳の進化の話なども登場し、視野の広さを実感する。情報というのを狭い意味で捉えるのではなくあらゆるものが情報という考えだ。受け手が存在しなくても情報は存在するし、なんら経済的な価値を有さない情報がほとんどを占める(コンニャク情報と呼んでいる)。All is full of informationだ。
現在存在するネットの予想や、そのようなものが登場した際に発生する問題点に関してもすでに指摘しているのもすごい。259ページあたりを読む(このへんは1988年の論文だ)と一億総表現者時代が到来することも予想していたように読める。

単に現在を予想していただけなら、なにもいまさら読む必要はないと思うが、著者独自の視点が面白く、現代でも価値は失っていないように思えた。