20050519

以下の記事を読んだ。
・企業社会の変化の中で退職者達が犠牲になっている。ここ数十年で企業の買収や売却は日常茶飯事となった。そのため退職者達が受け取る企業年金の責任を負う企業もころころ変わるようになり、混乱が生じている。二人の退職者の事例から問題を紹介。この二人の退職者が働いていた企業は複数回にわたって M&Aが発生し、その後年金業務自体がアウトソーシングされていた。このアウトソーシング先が年金受給者の監査を行なったところ、余計に年金を支払っていることが判明し、一括して支払うようにと通告してきたのだ。年金以外には大した収入源もないので当然払えるはずもなく、争いになったのだ。退職者達は企業のM&Aの経緯も知らず、年金制度についても詳しくないために、年金が余計に支払われていたと指摘されてもそれが正当なのかどうか確かめることも非常に難しいのだ。この二人のケースでは結局一人は年金業務を代行している会社の間違いであったことが判明し、再び年金を受給できるようになった。しかしもう一人は余計に受け取っていた年金を分割払いで返還することになった。


・近年のヘッジファンドの戦略は大規模な投機よりも、複数の資産の関係を狙って収益を上げるというものに変わりつつある。この戦略ではリスク・リターンも少なくなるが、必ずしもこの戦略がうまく行くとは限らない。最近の相場の動きを見ると、このような戦略のファンドが大きな損失を計上している。まずGM社債と株式への投資という戦略である。社債は売られすぎと見る一方、株式は買われすぎと考えたファンドが社債買い、株式売りという戦略を行なったが逆になってしまった。またCDOでは、リスクの高いトランチを買い、リスクの低いトランチを売るという戦略を行なったが、これもクレジット市場の下落の中、低リスクのトランチの価格が安定していたために、損失を抱える羽目になった。同じような戦略を行なうファンドが多いために、ポジションを清算しようとすると市場に大きな影響を与えてしまう。解約が殺到すると一層、換金売りが発生する可能性がある。


Time Warnerが試験的に、eBayのオークションをテレビ経由で行なえるサービスを導入する。これは一部地域のデジタルテレビの加入者のみに提供されるものであり、視聴者はテレビを見ながらオークションに参加できる。ただ一番最初に入札する際には、PC経由で行なう必要がある。その後、商品が無事落札できたり、ほかの参加者が高値で入札した際にはテレビ画面の隅にその旨のメッセージが表示されるという。


鳥インフルエンザが再び拡大することが恐れられている。既にインフルエンザにかかった人に鳥インフルエンザが感染すると一層強力なウイルスに変化するため、爆発的に感染者が増加するのではないかと懸念されているのだ。鳥インフルエンザに対して高い効果を有しているのがRocheのTamifluという薬品である。WHOでは人口の4分の1程度の備蓄をしておくように各国に要請している。しかしアジアで鳥インフルエンザの脅威の最前線にある国が経済的な理由で充分な備蓄を行なえない状況にあるのだ。先進国に、発展途上国に対して薬品を寄付するように促す声も出ている。この薬品は生産するのに1年程度かかる。Rocheは大きなかけを行い、1年以上前に生産量を倍増させるという決断を行なった。この賭けがあたり、同社は高い利益を得ることができた。現在再び生産量を倍増させる計画を実行している。


・米国のAngola刑務所は凶暴な犯罪者のみを収容している。受刑者同士の殺人事件も多かったが、高齢化の影響もありだいぶおとなしくなってきた。Dead Man Walkingなどの映画の舞台にもなっている。処罰の厳格化に伴い、受刑者の多くが終身刑であるため受刑者の高齢化が進んでいる。加えて犯罪者は麻薬服用や健康状態が悪いことが多いために早く亡くなることも多い。そのため近年刑務所内で亡くなる受刑者が急増しているのだ。亡くなった場合、身寄りがいない受刑者も多く、刑務所内で葬式や埋葬を行なうことも多い。死んでも刑務所の外には出ることができないと受刑者は嘆くほどだ。受刑者が葬式を執り行っている。この刑務所では大工の訓練を受けた模範囚が棺を生産している。刑務所内で棺を製作するまでは外部から購入していたのだが、あまりにもひどいものなので見るに見かねた刑務所長が音頭を取って生産を行なわせるようにしたのだ。



最後の刑務所の記事は面白い。今年読んだWSJのPage Oneの記事の中でも最も面白いのではないか。