20050311

TH55で以下の記事を読んだ。
・ドットコムバブルの最中ではP/Eが優に100倍を上回っていたのがCiscoである。現在同社のP/Eは市場平均と同水準にまで下落している。同社の収益環境や財務体質(借入金ゼロ)を鑑みると割安との指摘も多い。成長株投資家が見向きもしない中、バリュー株投資家が同社に目をつけるようになってきた。同社はルーターやスイッチでは圧倒的なシェアを有しているために、これ以上のシェア上昇は難しい。今後はVoIPなどの新しい市場が収益拡大を実現していくと見られている。同社は多額のキャッシュフローを投じて大幅な株式買戻しを行なっている。ハイテク企業での買戻しはストックオプションによる希薄化を防ぐという意味合いが高いのだが、同社の買戻しはかなりの規模であるために、大幅に株数が減少している。気前よく従業員にオプションを付与してきた同社だが、オプションの経費計上などの流れの中、オプション付与数を絞り込んでいるようだ。




・ブロードウェイという硬直した業界に旋風を巻き起こしているのが、Rentなどを手がけたプロデューサーのSeller氏である。同氏は今まで業界では考えられなかったような戦略を実行している。積極的にテレビを利用して舞台の宣伝を行なったり、座席料金の設定に航空料金のような仕組みを取り込んだりしているのだ。更にはブロードウェイのアカデミー賞といえる、トニー賞の受賞のために大規模な工作に乗り出したのだ。アカデミー賞では受賞のための工作活動はよくあることだが、トニー賞では今までなかっただけに、業界内でも大きな波紋を呼んでいる。



・長い間、日本企業が高い競争力を有していた家電業界で、米国勢が競争力を取り戻しつつある。デジタル化が進むにつれて、ハードウェアそのものよりもソフトウェアが大きな価値を占めるようになったためだ。その良い例がAppleである。同社のiPodには自社独自のハードウェアはあまり存在しない。しかし使いやすいソフトウェアで高い競争力を保っているのだ。ほかにはKodakのデジカメも同様の戦略をとっている。両社とも生産は低コストな国に外注していることも、日本企業とは異なっている。日本企業は社内で生産することを好み、部品も自社で開発することが多い。垂直統合型のビジネスモデルとなっているのだ。



・新興成長国の株式市場は過去数年間急上昇しているが、まだまだ上値余地が大きいと指摘するアナリストもいる。中国という巨大市場が登場したことで、新興成長国が輸出する天然資源の需要が増加していることに加えて、先進国からのアウトソーシングの流れの恩恵を受けているためだ。このような背景があるために、今までのような急騰と暴落という新興国市場を特徴付けていたサイクルはもはや存在しないと見ているのだ。新興成長国の信用格付けやP/Eは急速に上昇しており、先進国との格差は急激に縮小している。もちろんすべてのアナリストが強気というわけではない。現在の新興成長国市場の上昇は米国の低金利の恩恵を受けているという側面も大きいためだ。そのためFRBが今後一層金利を引き上げてくると急落すると見る者もいる。また先進国ほど業種が分散化していないことや企業統治が不十分であることも懸念材料である。低金利に痺れを切らして、従来はあまり関心を持っていなかった投資家も新興成長国に資金を投じているという面もある。



・台湾のハイテク企業であるHigh Tech Computer(HTC)の株価が急騰している。今年になって3割以上の上昇を見せているのだ。背景には予想を上回る業績の伸びと新製品の発表がある。同社はPDAスマートフォンを他社ブランドで生産しており、欧米の多くの電話会社を顧客として抱えている。スマートフォンは今まではハイテクのハイエンドユーザーに限られていたが、徐々に主流になりつつある。同社は自社ブランドで販売することがないために、携帯電話会社からみれば魅力的な取引先になるのだ。同社はWindowsに基づいたスマートフォンだけではなく、PalmOneTreoの生産も行なっている。分散していることにより収益の変動が少ないものと見られている。

米国の家電業界の復活の記事が興味深い。ソフトウェアに価値が移行するにつれて、米国企業の競争力が増しているとの指摘だが、取り上げられている企業はAppleKodak、Tivo程度で、この3社から結論を出すのは少し無理があるような気がする。特に大成功を収めているのはAppleだけなので、これだけで米国家電業界の復活といえるのかどうか。