20040206

  • ウォール街にはプロ達には当然知られている「公然の秘密」というものがある。これらの多くは違法でありながら、当局もなぜか摘発してこなかった。IPOの割り当てで企業経営者を優遇したり、投資銀行業務と調査部門との利益相反関係などがそうである。この件はニューヨーク州検事が摘発に乗り出すまでは長い間放置されていた。しかし現在でもいまだ個人投資家にあまり知られていない「公然の秘密」が残っている。このうち3つを紹介。
    • 「取締役会の議事録の改ざん」どの程度まで会議の内容を記述すべきかは弁護士によって大きく見方は分かれる。今までは詳細に記述しないほうが後の訴訟で不利な証拠を与えないためにも有利と見られていた。しかし最近では、詳しく書いたほうが逆に職務を忠実に執行しているというアピールになるとの見方もある。
    • 「証券取引におけるトラブルの仲裁において命じられた損害賠償の多くが実際には支払われていないこと」 86年の最高裁の判決により、証券会社に口座を開設した顧客は、トラブルが発生した場合でも裁判に訴えることはできない。仲裁と呼ばれる審判で処理されることになる。ここで投資家が損害賠償を勝ち得ても、実際にその金額を得られるとは限らない。小規模な証券会社の場合は会社を閉鎖してしまうためだ。このような状況への対策として、証券会社への最低資本金の引き上げや保険加入などが検討されたものの、証券会社の反対で導入できていない。
    • 「地方債を個人投資家と売買する際に、証券会社が加えるスプレッドが極めて高いこと」株式・国債社債などと異なり、地方債の取引価格は不透明なために、証券会社は法外なスプレッドを徴収することがある。業界の慣行では5%程度が上限らしいが、7%以上を徴収する場合もある。取引価格を公開する動きには証券会社が反対している。出来高が少ないために取引価格が正確なものとは限らないと主張している。

  • 変額年金に関するトラブルが多くなっている。変額年金は投資信託と保険が一体化したものであり、保守的な運用を望む高齢者には魅力的に映る。しかし実際は一定期間資金を引き出せなかったり、解約時には多額のペナルティーが科せられるという面を持っている。販売会社はこのようなデメリットを隠して販売していたとの被害者の声も多い。高齢者に販売されることが多いが、変額年金は運用期間に発生した運用益が無税であることを鑑みると、運用期間が長い若年層のほうがメリットを享受できる。(もちろん他の非課税枠401Kなどを使い切ったことを想定)販売時に販売会社が得られる手数料(10%以上)が販売会社には大きな魅力となっており、そのために変額年金の回転売買を行うケースもあるという。ニューヨーク州検事は投資信託における、短期売買や引け後取引などを捜査しているが、その一環として変額年金における不正も近い将来に摘発に乗り出すと見られている。