フランスモデル

The French model : Vive la différence! (The Economist)
欧州では、英米と比較して、高率の税金・高福祉・政府による経済活動への介入が大きいといった特徴がある。しかしフランスほどこの特徴が目立つ国はない。数年前まではこのようなフランスの政策は、経済活動の停滞・雇用創出の貧弱につながっていると批判されていた。フランス大統領であるサルコジ氏もそのような批判を行っていて、英米のようないわゆるアングロサクソンモデルに変換すべきと主張していた。しかし大統領(変わり身が早い!)を始め、当の英米でさえ、フランスのやり方が本当は優れているのではないかと考えるようになってきた。フランスも世界経済の悪化の影響を逃れることは出来ない。しかし他国よりは比較的軽微に済んでいる。銀行セクターも規制が強かったために破綻処理に追われるような状況ではない。高福祉のために、雇用が削減されても社会不安に陥るリスクは少ない。しかし規制が強いということは、自由な経済活動が出来ないことであり、イノベーションが生まれにくいことでもある。米国のように新しい企業が急速に巨大化するようなサクセスストーリーは少ない。人員削減が難しいが故に雇用も生まれにくい。しわ寄せを受けるのは若い世代だ。
結局、成長と景気後退の変動範囲をどこまで許容できるのかという選択の問題になりそうだ。高成長もないけど激しい景気後退もないという安定した社会を目指すのか、それとも高成長と激しい景気後退を伴う社会を好むのか。たぶん、人間の本性からして安定した社会のほうが幸せに生きることが出来るような気もする。毎月20万円の給与が安定してもらえるのと、給与がゼロと百万円が繰り返すような生活が選択肢として与えられれば前者を選ぶ人が多いだろうなと思う。ただ問題なのが、閉鎖した国でもないかぎり、他国がどのような経済モデルを採用するかに引きずられてしまうという点がある。アングロサクソンモデルが支配的であれば、そちらに引きずられてしまう危険性も高いと思う。
この前のThe Economistの特集に、起業家精神があったが、アングロサクソンモデルとは起業家社会とも言い換えることができそうだ。The Economistとして起業家精神こそが生活水準を引き上げ、世界から貧困をなくすのに欠かせないと確信しているのだろう。そんな気がした。