新興国での中産階級

The new middle classes in emerging markets : Burgeoning bourgeoisie (The Economist)
非常に考えさせられる内容だった。新興国中産階級の台頭と聞いても、巨大市場が生まれるということぐらいしか想像できなかったが、実際には予想を超えるような大きなインパクトを社会に与えることになるようだ。中産階級の価値観というか利害関係が政治も大きく変貌させる。ただ中国やロシアに見られるように必ずしも中産階級が増えたからと言って民主主義が進むとは言えない。しかしより説明責任を求めるような潮流にはつながるようだ。巨大な中産階級が存在する方が社会は安定するという。エリート層と貧困層に分かれていると利害は激しく対立しやすい。もし貧困層が権力を握ると、エリート層の権力や富がねらい打ちになる。しかし中産階級は幅広い集団で構成されており、多くが納得するような要求は少ない。私的所有権やインフレ抑制、経済活動の自由化程度である。そのためエリート層も中産階級を受け入れやすいという特徴があるようだ。
中国共産党のキャリアシステムに関する記述が非常に興味深い。幹部の子弟だからといって優遇されている訳でもなさそうだ。ジョブローテーションでいろいろな部署に配属されそこで自分の能力を上に示さないといけないらしい。しかも資格に非常にこだわる。幹部の多くが修士号以上の学歴で海外の大学に留学した経験を持つものも多い。中国共産党の人材育成システムは1950年代のアメリカの大企業と大して変わらないとまで言っている。

中産階級が起業を促進させるという効果も面白い視点。貧困層ではお金を借りることもできないし、自己資金もないので新規に商売を始めようにもなかなかできない。中産階級が存在すればこそ、新しいビジネスも生まれてくるようだ。単に消費者だけではなく、雇用主としても大きな影響力を持つことになる。