米国の住宅価格下落を止めるには

Economics focus : A helping hand to homeowners (The Economist)
銀行に公的資金を投入しても、根本的な問題(不良債権化するモーゲージ)をなんとかしないと金融危機の解決にはならないとの声が出ている。米国の住宅ローンには他国と異なる大きな特徴がある。まず住宅ローンはノーリコースローンであるということ。すなわち住宅ローンが返済できなくても債務者は住宅を手放せば、それ以上の債務弁済を免れることができる。別の特徴としてはローンが証券化されているという点だ。ノーリコースというのがくせ者で、債務者は住宅の価格が残債よりも大きければ返済する動機はあるが、住宅価格が残債を下回ってしまうと返済する動機を失ってしまう。返済を止めて抵当流れにしたほうがましと考えてしまうのだ。このように抵当流れの住宅が増加すると、住宅価格を押し下げるのでますます返済を止めてしまう債務者が増加するという悪循環に陥ってしまう。また証券化されていることにより、返済条件を変更することも難しくなっている。
こんな状況を変えるべくいくつかのアイデアが登場している。国が低金利のローン(ノーリコースではないので所得からも返済を行わないといけない)を提供して、それを既存のモーゲージと置き換えるという方法や、物件価格が2割低下すると自動的に返済条件を変更できるオプションを債務者に与え、債権者には物件価格が上昇した際の利益を享受できる権利を渡すといったものがある。
この記事を読んでいると、アメリカは債務者に便利な国だなと思った。たぶんアメリカでは日本のように住宅ローンの返済が行き詰まり家族が崩壊したり自殺に追い込まれるようなことはあまりないのだろう。ただノーリコースでありながら頭金ゼロでも融資をしてしまうというのがあまりにも無茶すぎる。これなら住宅を買わない方が不思議だ。