苦境に立たされるヘッジファンド

Hedge funds in trouble : The incredible shrinking funds (The Economist)
まとまっていて面白い。現在進行中の株安は信用収縮を受けてヘッジファンド保有資産を売却していることが原因の一つだと考えていたが必ずしもそれだけではないようだ。ヘッジファンドにはいくつかの共通点がある。金持ちの資産家や機関投資家を顧客にしていることや、成功報酬を徴収すること、プライムブローカーとの関係などいくつかが挙げられるが、レバレッジを効かせているという点は必ずしもヘッジファンドを共通点とはならないらしい。ヘッジファンド全体でもレバレッジは数倍程度と非常に穏やかな水準にとどまっている。20倍程度のレバレッジを抱えている投資銀行はえらい違いだ。またプライムブローカーもヘッジファンドへの信用供与を特に絞ってはいないとの話もある。
ヘッジファンドはどんな相場展開でも絶対収益を上げるというのがセールストークだったはずだが、現在の相場ではほとんどのカテゴリーで運用成績が悪化している。空売りを行うのが難しくなってきたこともあるが、大きな要因として神経質な顧客という問題がある。昔は安定的な顧客を抱えていたが、ファンドの規模の拡大により、ほとんど投信と変わらないような顧客層になってきた。大きな比率を占めるファンド・オブ・ファンズは少しでも悪い兆候が出ると一目散に解約する傾向があり、換金売りのために保有資産の売却に追い込まれ、運用成績がさらに悪化するという悪循環になっている。また解約が出るとの懸念だけでも換金売りを引き起こすには充分だ。一部の有名ファンドを除いては四半期毎に解約することができるのだが、そのような逃げ足の速い資金で流動性の低い資産で運用を行うことにそもそも無理もあった。運用成績が悪化すると、中小規模のヘッジファンドは経営危機に直面する。成功報酬をもらうことを前提にしたビジネスモデルとなっているので、固定費が大きいのだ。顧客も多くの運用会社に投資するのではなく大手の運用会社に資金を集中する傾向を見せていることもさらに中小ファンドには追い打ちになっている。ただ多くのファンドが店じまいに追い込まれ、ライバルの投資銀行レバレッジの縮小を行っている中、生き残ったファンドにとっては投資機会は溢れているとも言える。