疫病と世界史 下 / ウィリアム・マクニール

疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

引き続き読書。英雄の登場しないこのような世界史では、感染症と人口動態が歴史を大きく左右する要因として紹介される。もちろんこの2つは密接に絡みついている。社会が感染症に順応するには、一定の人口がないといけない。一定の人口規模に達して初めて感染症を小児病(子供のころにかかる病気)として封じ込めることが可能になる。
日本では人口が比較的少なかったために、小児病として封じ込めるにはすこし時間がかかったようだが、克服して人口増加が発生すると外国への進出意欲もわき上がってくる。秀吉の朝鮮派兵も国内の人口増加という要因である程度説明できるのではないかと指摘している。日本に限らずこのような図式が存在するようだ。

この本では医師や医療技術の進歩は最後の章まで取り上げられない。というのも最近に至るまで、医師は病気を治療するよりも悪化させることが多かったためと著者は考えているためだ。
牛痘により免疫を付ける行為はだいぶ前よりインドやアフリカでは一般的な行為だったようだ。ヨーロッパではあまりにも王室で天然痘による死者が出たために政治的な危機が発生したことから、どんな方法でも試してみようとする空気が生まれて利用されるようになったらしい。しかし欧州でも国毎に牛痘の利用度合いは異なっており、都市部よりも田舎のほうがよく利用されたという。人口の少ない田舎の法が天然痘による打撃が大きかったためだ。あと軍隊でも積極的に利用されたようだ。医療技術の実践の場として軍隊は大きな意味を持っていたという。軍人の健康状態を維持するのは大きな課題だったので当然だった。