- 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,佐々木昭夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 文庫
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マクロ寄生とミクロ寄生のバランスがどのように維持され、均衡状態が破壊された場合にはどのように回復するのかを述べているのだが、これらを読んでいるといずれもパターンは似通っているように感じる。
上巻の後半ではペストの伝播の歴史が中心となるが、実に様々な要因が影響を与えていることに驚く。反対にペストによる大量の死者の発生も大きな影響を与えずにはいれられなかった。ヨーロッパの場合、ペストによる死者の急増はキリスト教に対する不信感を増大させ、後の宗教革命につながるとも指摘されているし、イスラム教ではペストも神の仕業であるとの認識から積極的な対策が講じられることはなかった。
仏教とキリスト教は、いずれも病気の発生率が高い場所、つまりインドと中近東の都市(エルサレム、アンティオキアなど)で発展してきただけに、病気による突然の死を人間の生の大きな側面として扱わざるを得なかった。この点が疫病の蔓延で苦しむローマにうまく浸透できた理由の一つとも考えられるという。