疫病と世界史 上 / ウィリアム・マクニール

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

読み始める。カバーのイラストが怖い。文章が長いのですこし読みにくいが、非常に刺激的な本だ。ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」を読んで、感染症が人類の歴史に与える影響を初めて気づいたことから関心を持ったのだが、「銃・病原菌・鉄」があくまでも人間を中心にしているのに対して、こっちは病原菌を主役にしているような印象を受ける。
人類が農業を始め、環境に人為的な介入を行ったことが病原菌に苦しむ結果につながっているという。というのも農業とは多様な種を人間の好む単独の種に置き換えることであり、病原菌にとっては肥沃な獲物が広がっていることに等しい。同じ種であるが故に宿主を変えるのも容易だからだ。また農業によって、人間が密集して生活するようになったのも、病原菌にとっては宿主を見つけやすくなるという結果につながった。
病原菌と宿主(人間を含む)は共生関係にある。病原菌も宿主を一方的に搾取するのは宿主を殺すことになり、自らの生きる場所を失うことにつながる。そこで致死性の強い病原菌は進化が進んでいないと言えるという。HIVウイルスはそんな段階なのかもしれない。人間の中には多くの細菌が存在するが、それらも大昔には人間を苦しめる病原菌だったのかもしれない。