セカンドライフでの取り付け騒ぎ

A credit crunch in cyberspace : Trouble in paradise (The Economist)を読んでいて、セカンドライフで営業している銀行(Ginko Financial)で預金引き出しの騒動があり、支払いを停止したとの話が載っていた。バーチャルな世界なのに非常に現実的な展開である。セカンドライフに関しては関心がなかったので経済活動がどうなっているのかも知らなかったが、セカンドライフ内部で利用されているリンデンドルという通貨は、リアル通貨に換金できるらしい。その際の為替レートが1米国ドル=270リンデンドル程度となっているようだ。ゲーム運営会社はこのレートから大きく逸脱しないように介入まで行うというから、一種のドルペッグ制である。となると、セカンドライフリンデンドル預金金利も米国ドル預金金利と同程度になるのだろう。セカンドライフ内部で営業する銀行は、預金として受け入れたリンデンドルをどうやって運用するのか興味深い。セカンドライフ内部に貸し付け先は存在するのか、もしリンデンドルを借りたいというユーザーがいたとしても、信用リスクをどう判定するのか、また担保を取ることができるのか(不動産に抵当権を設定できるのか)、いろいろ疑問が出てくる。
ゲーム運営会社は土地を売却して(ユーザーはリアル通貨のみでしか土地は買えないらしい)、リアル通貨を手に入れている。セカンドライフへの資金流入は、ユーザーが米国ドルなどのリアル通貨を売却して手に入れたリンデンドルがメインになるだろう。セカンドライフの人気が高まれば、大幅な資金流入セカンドライフ内部のマネーサプライが急増することになるのだろうか?バーチャルな世界であるために、リアル世界との交易はなさそうだから、経常収支という概念もないのだろう。そうなると為替相場を動かす要因は純粋に金利差となるのか?考えるといくらでも疑問が出てくる。セカンドライフ内部に民主的な政府があるのかどうかは分からないが、ゲーム運営会社のみが制度を決定しているのであれば、かなり難しいさじ加減が求められそうな気がする。
またセカンドライフ内部で税制がどうなっているのかは分からないが、記事の中では土地の売却が運営会社の売上の多くを占めているとされている。バーチャルな世界であるが故に、土地はいくらでも追加することができるだろうし、土地を有限な資源として扱ってきた経済学では対処できないような事態になるのかもしれないと思ったりする。