中国が世界をメチャクチャにする

中国が世界をメチャクチャにする

中国が世界をメチャクチャにする

読み始める。この本を読もうと思ったのが、The Economistで昨年のベスト本として推奨していたためだ。Financial Timesでも同様に高い評価をしている。この本は元Financial Timesの記者が書いた本でもある。
まだ半分程度しか読んでいないが、中国という国の混沌とした状況がよく分かる。中国でのむせかえるような熱気が文章からも感じられるようだ。
「象が自転車に乗っているようなもの」が現在の中国らしい。倒れると世界中に影響が及ぶという意味だ。

しかし中国が経済大国になれるのかどうかは少し疑問も感じる。たしかに図体はでかい(人口が多いのだから当たり前とも言える)が、それだけにとどまってしまうのではないかという気もする。人口が多いことは中国の強みであるが、弱みでもある。雇用を生み出すために経済成長というアクセルを踏み続けなくてはならないのだ。昔の中国の皇帝の仕事の一つが臣民に食を提供することであったことと同じように、現代においてもこの国では食ならぬ職を提供することが政府の仕事の最重要課題となっている。これが実現できないときには「項羽と劉邦」で描かれたような内乱に陥ってしまう可能性もある。

「雇用優先」は経済に大きなゆがみを生じている。業績が悪くても企業をつぶれにくくしている。破産法も整備されていないので債務不履行でも企業は破綻しにくい。銀行もあまり貸出先の業績には関心がないように見える。過当競争で業績が悪化すると、リストラを行うのではなく多角化で乗り切ろうとする。その結果様々な業界に過当競争が拡大していくことになる。オートバイの価格はスクラップにした価格と大差ないという状況が恐ろしい。中国においては、金利がかなり低水準に抑えられているために(物価上昇率よりもかなり低い)、資本コストをあまり考慮しなくても問題はない。しかも中国国内に流入してくる外国資本に対抗して、人民元を一定レンジに押さえ込むためにはドルを買い入れて、人民元を売る必要があるが、これは中国国内のマネーサプライを増加させることになる。さらに、中国での貯蓄率は所得の4割という高水準も加わって、かなりの金余りの状態に陥っているのだろう。この金余りの状況が続く間は、過当競争も続くのではないかという気がする。


人口の多さという中国の特徴は、200年以上前より外国の熱い視線を集めることになった。この巨大市場にアクセスしたいと考えたためだ。ようやく2005年になってWTOに加盟することで200年越しの門戸開放圧力は実現されることになる。最近になって門戸開放を行ったということは、今までは外資系企業との競争には勝ち目がない、これからは互角に戦えるという判断があったとも考えられる。市場へのアクセスを希望する外資系企業には中国政府も容赦なく厳しい要求(技術移転)を出してくる。市場へのアクセスという餌に負けてこの要求に応じる企業も多い。ただそこまでして望んだ中国の国内市場がどれほど魅力があるのか疑問も感じる。現在は過当競争で大した利益を上げることはできないが、長期的に見た場合はどうなのか。


欧州よりも社会主義からほど遠い状況にあるのが現在の中国との指摘もあった。1000万人以上の出稼ぎ労働者には社会保障はない。民主主義が機能していないからこそ、思い切って社会保障を削減することもできたのだろう。