南の島のたったひとりの会計士 / 屋宮久光

南の島のたったひとりの会計士

南の島のたったひとりの会計士

昨日読了。2時間ほどで読み終えた。奄美大島で生まれ育った公認会計士が都会を離れ、島に戻ってくるという話。東京に住んでいる私から見れば、自然が豊かで人のつながりも強い奄美大島は魅力的に映る。しかし現実はそれほど甘くないようだ。
著者は、父の死をきっかけに島に戻って、元気のない奄美大島を会計という仕事を通じて盛り上げようとするのだが、様々な障害にぶち当たってしまう。サービスという見えないものに対してお金を払うという習慣がないことや、帳簿もろくにつけていないことなどといった問題も大きいが、一番乗り越えがたいのが、政府からの補助金漬けに慣れきった態度にある。自分たちでなんとかしようとするよりも補助金頼みになってしまうのだ。こんな中、著者は思うように進まない現状に嫌気をさし、アル中にまで転げ落ちることになる。幸いなことにアル中から立ち直ったことが、新しい視点で奄美大島の現状を見つめ直すことにつながった。
単に、会計の仕事だけではなく、売上を増やす手伝い、一種の経営コンサルティングのような仕事にも乗り出すことになり、島を活性化しようとしている。この本では、まだ活性化しようと試行錯誤している状態で終わっており、ハッピーエンドではない。これからどのように進んでゆくのか、続編も読んでみたい。
奄美大島の歴史や風土、一大産業と化した選挙戦などを紹介されているが、沖縄とはかなり違った特徴を有することに初めて知った。奄美大島を盛り上げてゆくには沖縄との差別化は避けることはできないようだ。